--.--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2014.04.27

フラグベント 第四話 中編

Frag"B"ent - フラグベント -

第四話  中編  「轢き逃げアタック」


" 魔が差した "

あの日、逮捕されたコンビニ強盗の犯人は後にそんな言葉を使ったと言う。

 急に、自分が自分で無くなった

 そうしなきゃ と思った

 気が付いたら お縄に掛かっていました


定型文と言われれば、そうかもしれない。
何処かぼうっとした風の犯人は、終始そのままだったと言う。

まるで、何か。
目には見えない、
抽象的な そう 「何か」 を何処かに置いてきてしまったようだった。



キーンコーンカーン


本日の授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。

知久矢も、そそくさと下校の準備を始める。
机の中の教科書を折れない程度の気配りで、リュックサックに詰め込む。
・・・今日の英語の暗唱も案の定、当てられた。
途中、単語が詰まったが、一応、恥はかかずに済んだ。
どっこら と荷物を背中にしょい込み、教室を出る。
部活? 文化部の活動は週一であり、ほぼ帰宅部状態だ。

「お、ちくやん、帰っちゃうの?」

「うん。今日、最新号。」

廊下でジャージ姿の友人とすれ違う。

「試合、近いもんで。またな!・・・明日、ネタバレすんなよ」

「それはわからんな」

他愛の無い会話を交わして下駄箱まで進む。
下駄箱横には掲示板が設置されており、校内の様々なお知らせが掲示されている。
右下に、新しくプリントが貼られていた。
プリントには以下のような簡素なお知らせが書いてある。


〝近頃、学外で 動物を殺傷すると言う事件が起きています。
下校中、登校中、不審な人物には注意して下さい。
もし、わが校の生徒で心当たりがあるようでしたら速やかに申し出るように。〟


具体的な事が全然書かれていないが、噂なら出回っている。

鴉や犬猫など、ふいに道端に転がっているというものだ。
犯人は未だ見つかっていない。

喉笛を切られていたり、
耳が千切れていたり、
胴体が穴だらけになっていたり。

いずれも散々な状態なのはそうなのだが、
奇妙なのは凶器が定まらないのだ。
犯人らしき人影を見ただの、学生らしいだの、肩に何か乗ってただの
何処まで本当で何処から尾ひれなのかがわからない。

この街も物騒になってしまったもんだ。

そんな事を思いながら、知久矢は下校路を歩いて行く。



「ベント君、おかえりー。」

「ただいまです、店長。あの、自転車って何処置いておいたら・・」

「あ、お店の裏の方に止めといてもらえる?表のはお客さん用だから。」

しばらくして。

「で、どうしたの?あの自転車。」

「もらっちゃったんです。」

経緯を説明する。

「おおー、やるじゃないの!美人から戴き物だなんて。この、この。」

「いや・・全然、そんなんじゃないっす・・」

嬉しいことは嬉しいが、何だか助けられてばっかりで情けなさもこみ上げてくるのである。
早いとこ、まともになりたいものだ。

「これからはもうちょっと余裕持って通えるね。毎朝、ひどいもんねぇ」

「・・・(返す言葉が無い)」

 [お・・・お゛はようござ、います!(乱れ髪、汗だく)]
 [おはよう、ベント君・・。あと3分だよ]
 [はい゛・・! (バタンとロッカーの音)]
 [あ、制服後ろ前。]

そして今日のシフトが終了。

「お先でーす」

「お疲れさまー」

自転車を引きながら、今日教えてもらった河原まで向かう。
前カゴにカメオが入っている。

『ふーん、これが自転車。』

「カメオも知らなかったか。」

『足で漕いで進むのか?』

「そうそう。カゴに荷物も載せられて便利だよ」

『振動が結構来るな』 

ガタガタガタガタ



場面は変わり、土手から少し離れた商店街。

「待てこらあああああ」

「うわああああああ」

男子学生二人が何やら追い駆けっこをしているようだ。
逃げるのは先程の 飯田知久矢。
追い掛けるのはそれより、上級生だろうか。
・・・どうやら仲が良さそうには見えない。

知久矢は涙目になりながらどうしてこうなったのか回想する。


道に、鳩が転がっていた。
転がっていたと言うのは、既に事切れていたからだ。
首筋に、べっとりと赤黒く血がついている。
固まろうとする血は、本当に〝糊〟のようだった。
見事に真一文字に、切り裂かれていた。
ぱっくりと、頭部と胴体部が〝く〟の字を作りだす。
僅かに開かれた嘴が、苦悶の時間の短さを物語る。

例の殺傷犯の仕業だろうか?

堂々としたものだ。
その時、横道に逸れていく同学の男子生徒を見掛ける。
下校時間で普段ならもっと生徒が押し掛ける大通りに今は自分以外見当たらない。

そこで、横道に入ると、店と店の間の細い路地裏に出るはずだ。
ゴミ捨て場ぐらいしか見受けられず、学生には用事があるとは思えない。

「もしわが校の生徒で心当たりがあるなら・・・」

好奇心?
危ない奴は他の人に任せておきなよ。
正義感か?
自分でもよくわからない感情に振り回されながら、知久矢はそいつを追い掛ける。
ただし、足音は出来るだけ殺し、距離を一定に保ちながら。
大丈夫。影の薄さならちょっとした自信がある。


路地裏でゴミを漁っていたカラスが、侵入者に警戒し、飛び立とうとした。
バサッと羽音が一音だけ響く。
男子生徒の頭上数十センチメートル程の高さまで上昇したところで、
白い何かに絡めとられてしまう。

積み上げられたダンボールやゴミ箱の密集した所から知久矢は顔だけを覗かせて様子を窺う。

それは、何とも奇妙な形をしていた。
全体的に見ると、よく「オバケ」として連想される白く流動的な姿を思わせる。
兎の耳のように、長くひらひらとしたものが頭頂部についている。
ただし、それは3本であり、中心だけ色が異なる。
腕は短く、ネズミ等のげっ歯類を想像させる。その先には木の枝さながらに細く長い指。
伸縮した腕が鴉を捕まえたようだ。
2本の、こよりに似た器官が下部には伸びており、やはり片側の色が違う。
それらは互いに捻じれ合い、大部分を地上に余らせながら奇怪なバランスで立っている。

カアッと鴉が短く鳴いた。

男子生徒が右腕を横に伸ばす。
手の先が、赤黒く、刃物のように異様な形に変化していた。
それを、そうするのが当然であるかのように自然な動きで、
目の前でもがく鴉の首へと一文字に薙ぐ。
ラッカースプレーをぶちまけた様に赤色が、周囲の壁へ、ゴミ袋へ、飛び散る。
男子学生にも振りかかるかと思われたが、白いオバケが前に出ていて返り血を引き受けた。

目の前の光景に知久矢は戦慄した。
途端、壁にしていたダンボールが崩れて落下し、物音を立ててしまう。

男子学生がこちらを向いた。
肩に寄りかかるオバケも同時にこちらを向き、前側の全貌が明らかとなる。

顔は、また見る者を不安にさせるように出来ているとしか思えない造形をしていた。
大きく、縦長の眼が二つ。
周りは濃く縁どられており、中心に向かうのと、下側に突起が描かれており、
その中をぐりぐりと縦横無尽に動き回る瞳孔もまた縦に向く。
口はマスクのように下から三角形に覆われていて、
それが、醜悪にがぱりと開き、犬歯ばかりがずらりと並ぶ凶暴な相貌が露わとなった。

「「お前、見てた?」」
肩の奴と、その乗られてる奴の声が重なる。


何だこれ何なんだこれ
こいつはヤバイ。本能的にそう思う。
動け、足!逃げろとりあえず。ここにいたらきっと面倒な事になる。

前傾姿勢でまろびつつ、その場から離れる。

「「困るなあ、まったく」」

後ろを全く困った様子を見せず、楽しむようにそいつが追ってくる。




「よし。ここで練習しよう」

土手の上、自転車道となっているそこは、真っ直ぐ舗装されており
時々、犬の散歩客や下校中の学生の自転車が行き交う。

スタンドをはずし、ベントは自転車に跨った。

「いやー、皆、何気なく乗ってるけどバランス取りづらいなあ」

『こう、止まらずに漕ぎ続けんだろ』

「うわっとっと!」

左側に大きく傾ぎ、慌てて足で踏ん張る。

『でお前、運動神経の方はどうなの?』

「さあ・・・。」

『憶えてねぇか。便利だなあそれ。』



息切れが激しい。
口の中はとっくに血の味がする。
心臓が訳の分からない程どくどく言っている。
人間必死になったら結構走れるものなのか。
首だけで、後ろを振り向くと追跡者にはまだ余裕がありそうだった。
前に向き直す。
もう、土手まで来たのか。
若干、もつれ気味の足に自然、道の端へと誘導される。
下り坂の加速で一気に、川の橋、高架下へと向かう形になった。

砂利にとうとう足を取られ、知久矢はすっ転んだ。

「いったた・・つぅ~・・」

慌てて起きあがると、

「「手間あ取らせんなよ」」

「な・・・」

目の前に男子学生と白いオバケが立ちはだかっていた。
いとも気だるそうに、食堂のメニューででどちらを選ぼうかと言うような気楽さを顔に出しながら
知久矢を見据える。見下す。

「「どうすっかなあ」」

「アンタ・・だろ、鳩」

「「む?」」

「犯人。」

途切れ途切れに何とか声を絞り出す。
こっからどうしたらいいんだ? 

「肩の・・それ・・何なんだよ」

その言葉を聞き、オバケの方が目を見開く。

「「お 前 見 え て た の か !」」

次いで口を割れんばかりに開き、一体何がそんなに可笑しいのか高らかに嗤い出す。

「「ギャハハハハ!!!〝連中〟の仲間か、お前!・・・じゃあ丁度いいな」」

言いながら、男子学生の右腕が変形する。

「「口封じに、〝替わり〟に、」」

そして振り被る。

「「ついでにヒトはまだだったからなあ!!」」

振り下ろされようと言う瞬間。
知久矢は咄嗟に両手で頭を庇う

「うわあああああ、あ、ちょ!誰かいる!どいてどいてえええええ」

土手の坂を猛然と下り、砂埃を巻き上げながらこちらに向かって来る自転車が一台。
知久矢の目の前、男子学生の方にもろに突っ込んで行き、
わき腹に自転車カゴがヒットする。
弓なりの体形で、男子学生は白いオバケ諸ともに数メートル先に吹っ飛んで行った。
そのまま自転車も進み、砂利の中、大きめの石にタイヤを取られ、つんのめる様に停止した。

見事な轢き逃げアタックだった。

「・・・」

知久矢はあまりの出来事で声がでない。
自転車の運転手が慌てて降り、スタンドをかけ損なった自転車は
横倒しになりガシャンと音を立てる。前かごから何か平たい物が投げ出された。
空回った車輪のカラカラと鳴るのを聞きながら

「うわ、大丈夫ですか?!」

ベントは自分が見事に轢き倒してしまった人物へと駆け寄る。
それを見て知久矢はハッとした。

「気を付けて下さい!そいつ・・」

「え?」

知久矢の方へ振り向いたベントの頬を何かが掠めた。
男子学生の方へ目を戻すと、
忌々しげにこちらを睨みつけ、変形した手をこちらに向けていた。

「うわ、すみません!そりゃ怒りますよね・・」

頬を押さえながら思わず後ろに飛び退る。

「って、あああ、腕、腕どうしたんですか?! 肩にもオバケエ!」

「「てんめぇ、何しやがるっ!!!」」

学生、オバケ共々明らかに激昂していた。
憤怒の形相でベントの方へと走り寄り、腕の刃を振るい出す。

「うわ、危ない危ないですよ!落ち着いて下さい!」

「「うるせえ! もういい・・ちょっと斬らせろお前!!」」

右上方から振り下ろされる刃を、ベントは危なっかしくしゃがみながらかわす。
ひゅうっと風を切る音が、攻撃の容赦の無さを教えてくれる。

「肩に、肩に何か乗ってますよ! あと、お願いですからそれしまってええ」

返す刃で左横向きに攻撃が迫る。
片手をつきながら必死に右に体をよじるが、僅かに追いつかれ、左袖が切り裂かれた。

「「てめえも、〝月〟の連中の奴らか・・!」」

次は上方から縦方向の斬り下ろし。
無我夢中で横に転がりを決め、紙一重で避ける。
砂利にがしゃりと刃が当たった。
後ろ髪が少々散髪された気がする。

「月・・・?」

どうしてかベントはその単語に引っ掛かりを憶えた。

『おい。』

寝転がっている形で正に目と鼻の先、カメオがドアップで目の前から呼び掛ける。

『奴さん、やる気だぜ?お前、どうすんの?』

「俺は・・」

砂利から刃を引き抜き終え、相手はこちらを見下ろし、歩き出す。
余裕からなのか遊びからなのか、激昂している割には随分とゆっくり向かってくる。

「まだ、死にたくないよ」

『で?』

ベントはカメオを掴み、立ち上がる。
男子学生の方へ向き直り、キッと視線を送る。

「だから、また 力を貸して欲しい」

『ふん。』

手を顔の前に持ち上げ、ベントはいつかの様に仮面を装着した。

敵接近

装着!
スポンサーサイト

この記事へのトラックバックURL
http://instant3c.blog15.fc2.com/tb.php/178-b90e89df
この記事へのトラックバック
この記事へのコメント
管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。