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2014.04.03

マジラバ12話 ロリコンエレコンプロのプライド 中編

「はぁー、やっと撮影終わったよ…」
夜の11時過ぎ。深夜とも呼べるこの時間までコマネズミのごとく走り回されていたカメラマンが、精も魂も尽き果てたという様子で呟いた。
「ほとんどビョーキだよなあのオバハン…」
重い三脚などの機材を肩に担ぎ上げた仲間が、これまた憔悴しきった様子で相槌をうつ。
「てゆーかさ、何であの人が仕切ってるわけ?ウルドちゃんがいくら凄い子役でも、あの人はただのマネージャーなんでしょ?監督も『文句言うなら主役下ろす』くらい言えばいいのに」
最初のカメラマンが文句たらたら、と言った調子でいうのに、機材を担いだ方の男が冷静に返した。
「おめー監督だとしてそのセリフ言えるか?みんなウルドちゃんが欲しくて物凄い競争率ん中やっと勝ち取ったってーのに。視聴者はみーんなウルドちゃんが観たくてテレビを着ける時代だってのに。」
「う…」
カメラマンは、自分が監督の立場だったと想像したら、何も言えなくなってしまった。しかし、彼の友人は思慮深く続けた。
「でもよ、納得はいかねえよな…」
「なあ…」

一方、ウルド護衛隊もまた、映画とは何ら関係もないのにこの時間まで連れ回され、カッサカサの抜け殻状態で真っ暗な廊下を歩いていた。
「ホーリー、私はもう疲れたよ…」
鈴音が古いアニメの主人公の、貧しい画家の少年を真似して呟いた。
「冗談言えるだけ鈴音はまだ大丈夫だよ…」
ホーリーが鈴音の肩の上で、洗い古してよれよれになったぬいぐるみのようにだらんと腹ばいになって垂れ下がり、ツッコんだ。
「こんな時間まで付き合わされて、お肌荒れるっての…」
「塗るか?『保湿クリームプラシーボ』ロリ監督がくれたぜ」
ぼやく鈴音に竜星は、どうやらスポンサーの不二里薬品がくれたらしい新作保湿クリームを差し出す。鈴音はクリームの小さなビンをちらりと一瞥しただけで、すぐに目線を床に戻してしまった。

「プラシーボに騙されてくれるほど私のお肌はピュアじゃない…」
「おめーら意外と元気だな」
竜星と鈴音のやり取りを聞いていたホーリーがついついツッコミを入れる。
「で、今からどーすんの?帰る?」
「何を当たり前なこと訊いてんだ、帰るに決まってんだ…ろ…」
竜星の言葉は尻すぼみになって途中で消えてしまった。目の前に立ちはだかる、背の高い女の影。三人の前に突如として現れたのは、ウルドの母親、百瀬真知子だった。
「な、なんのご用でしょうこんな時間に…」
「今日もあんな派手な襲撃がありましたね?でもアナタは捕まえられなかった。一級魔導士ならなんとかしてくれると、思ったからアナタを雇ったのに…」
百瀬は傲慢に言った。
「すみませんすみません」
鈴音がすっかり恐縮しきってペコペコと平謝りに頭を下げる。
しかし、竜星の方は何も言わずに百瀬の冷酷な眼差しを正面から受け止めていた。百瀬は竜星が何もいわないのを良いことに、偉そうな気取った口調で言い放った。
「まだ近くにいるはずよ。ちゃんと捕まえて私とウルドの前に引きずり出してくれるまで、帰ることはまかりなりません!ホテル、ウルドと一緒の部屋を取ってあります。時間を取った分の代金は払うわ、文句は無いはずよ」
「ええー…」
竜星と鈴音とホーリーは、揃ってでかいため息を付いた。

未成年こんなに働かして、まだ飽き足らないのか。児童福祉法はどこに行った。

しかし、百瀬は鈴音とホーリーを鬱陶しそうに一瞥すると、ハエでも追い払うかのように手を振った。
「ああ、女の子と猫又くんは帰って構わないわ。居られてもお金が嵩むだけだし」

思いがけない百瀬の言葉に、鈴音とホーリーの疲れきった顔に満面の笑みが広がる。
「やったーっ!!てなことで、おやすみ竜星!」
この際、ハエでもゴキブリ扱いでも構わない。お家に帰れて一人になれて、ぽちゃぽちゃお風呂にあったかい布団で眠れるなら。
「え?!うわーんバカ、見捨てるなーっ!!」
一人取り残されると知った竜星が、全力で抗議する。
「依頼人が要らないと云うなら仕方ない、オレたちは黙って従うだけさ。オレも心は痛むんだヨ。」
ホーリーが胡散臭いほど満面の笑みを浮かべ、牙をきらりーんと輝かせながら言った。
「いや全然辛そうな顔してねーぞ?寧ろ疲れも飛んですっきりした顔だ、鏡みてみろよ」
「仕方ないじゃない、私たちこんなに無力なんだから。あんたに比べたら私の戦力なんて鼻くそ以下だし」
鈴音も普段竜星に言われていることをここぞとばかりに流用し、ニッコリ笑って裏切りの刃を突き付けた。
「自分をそんなに卑下するのは良くないことだと思うんだぜ!最近のお前はめきめき力付けて弟子から右腕に昇格しようかと思ってるくらいだしっ!!」
竜星が慌てて取り繕おうとするが、鈴音はゆっくりと首を横に振った。
「ありがとう、でも気持ちだけ受け取って後は返すわ。じゃっ、おやすみ~。」
鈴音は箒を手の中に出現させると、素早く跨がって颯爽と飛び去ってしまった。

「…ホテルに案内するわ。付いてらっしゃい。」
今までのやり取りを何も言わずに見守っていた百瀬が、三人の話し合いが解決?したのを見計らって竜星に声をかけた。
「はい…」
竜星には、従うしか道は残されていなかった。

竜星が部屋に入った時、ウルドは既にきれいな寝息を立てて静かに眠っていた。一日中演技をし続けて、この喧しい少女も流石に疲れたのだろう。ウルドの寝ているベッドの直ぐ近くに竜星が座っても、目を覚ます気配はなかった。

この分じゃ夢も見ないで眠っているな。

早く仕事を済ませて帰りたい。さっさと『犯人』がボロを出してくれたらいい。

竜星は思う。

ウルドがこんなに無防備に眠っていて、しばらく自分もあの母親も、席を外していた。襲うならそれが絶好のチャンスであった筈。にも関わらず何事も起こらなかったということは…

昼にカメラが割れたのを見て以来、抱いていた疑念が確信に近づいていく。

「オマエラなんて、大っ嫌いだ」
真っ赤に血走った目、青い顔。一層際立つ黒いクマ。物凄い形相で竜星が言った。
「怒らない怒らない。お詫びに差し入れ作ってきたよ、サンドイッチとクッキー」
翌朝、早いうちに、鈴音とホーリーが竜星のもとに戻ってきた。

「朝飯くらいで償えるかっ、ウルドの奴目を覚ますなり夜這いされただなんだと騒ぎやがって。」
ぷりぷり怒りながらも、竜星は鈴音が持ってきた卵サンドをばりばり貪る。
「ウルドちゃんは?」
鈴音が訊くと、竜星は部屋に備え付けのティーバッグで淹れた紅茶で口の中のものを飲み下しながら出口近くのドアを指差した。
「風呂。覗くな覗くなって大騒ぎしながら入ったぜ。ロリ監督じゃあるまいし、興味ねえっつの」
その時、ちょうど件のウルドが、頭にタオルを巻き付けバスローブと言った出で立ちで風呂場から出てきた。
「あら、覗かなかったの。偉かったわね」
「喧しいガキ、赤飯喰って出直してこい。」
「オマケさんと猫ちゃんも。逃げたんじゃなかったのね」
いつの間にか部屋に人が増えていることに気づいたウルドは、からかうように笑う。
「私の名前は鬼塚鈴音よ。この子はホーリーナイト。名前で呼んでよね」
鈴音がちょっと厳しい口調で言うのに対し、ウルドはあの子供らしからぬ生意気そうな笑みを口の端に浮かべた。

「あれ、何か良い匂いがする」
しばらくしてウルドが気づいた。
「クッキー焼いてきたのよ、良かったらどうぞ」
鈴音が花柄の布巾で包んだ皿を指さした。ウルドは布巾をほどいて中身を見る。色々な形、色々な種類のクッキーが綺麗に積まれていた。
「ふーん…この所甘いものは一流パティシエの作るデザートしか食べてないんだけど。庶民がどんなもの食べてるのかも知らないと演技に幅がでないし、味見してあげてもよくってよ」
ウルドが腕を組んでおすまししつつ、口元からヨダレを垂らしながら言った。
「…なんで素直にくれって言えないわけ?」
呆れながらも鈴音はウルドの方に皿を押してやる。ウルドはココアとプレーンのボックスクッキーを選んでかじる。
「…美味しい…」
ウルドの顔が、年相応の子供みたいに綻んだ。
「そりゃあ良かった。」
鈴音はニヤリと笑う。

不意に、部屋のドアがまた開いた。
「ウルド、身支度はもう出来たの?今日は『明日パパとママが逆に』の撮影が…あっ!!!」
ドアを開けたのは百瀬だった。鈴音たちが何事かと訝る間もなく、百瀬はズカズカと部屋を突っ切り、怒りそのものと云った形相で鈴音たちを指差した。
「クッキー!」
「…弟子の差し入れですが、それが何か?」
竜星は冷静な口調で百瀬に聞き返す。それが余計に百瀬のカンに触ったらしい。
百瀬はバスローブが脱げそうになるくらいウルドの肩を掴んで揺さぶった。
「食べたの?」
「い、一枚だけ…」
「太るじゃない!!」
百瀬はヒステリックに叫んで鈴音を睨んだ。
「え、演技のためですからっ。ねえウルドちゃん」
鈴音は努めて笑顔で、百瀬を落ち着かせようと奮闘する。ウルドは何も言わず、黙って俯いていた。
「演技?!クッキー食べるモノマネでもやるっていうの?!いいかしら、ウルドはグルメ番組なんかにも引っ張りだこで、そんな中女優に相応しい体型を保つために私がどんなに努力しているか、わかっているの?わかってないでしょう!!大体アナタ、昨日帰るように命じたでしょう?どうしてまだここに居るのっ!」
「朝飯のデリバリーですよ、給料は頂けても食事時間については忘れてらっしゃるようなので自主的に調達したまででーす」
竜星は百瀬の方を見もせずにサンドイッチをかじりながら言った。百瀬は竜星の持っていたサンドイッチを乱暴に奪い取ってゴミ箱に棄てた。
「神崎さん、アナタがもっとしっかりしてくれればこんな不始末起こらなかったのよ!二度とこんな、勝手なことしないで頂戴。わかったわね?!!」
百瀬が怒鳴り声を上げると同時に、クッキーが皿ごと赤い炎に包まれた。
「ああ…」
めらめらと焦げ臭い臭いを振りまきながら燃えていくクッキーを、鈴音は為すすべもなく見つめていた。
「あと10分で出発よ。ウルド、そんなだらしない格好してないで早く支度なさい。」
百瀬はそれだけ事務的に言うと部屋を出て行った。
ウルドは、すっかり炭の山に変わり果ててしまったクッキーを、虚ろな目で見下ろしていた。
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モンペや・・!(ズボンじゃ無い方)
生意気な子役もモンペも嫌な奴~って感じがすごく出ててイイですね!全員ぶん殴りたい!
ギャグテイストだからかキャラが崩壊気味な気がしましたが、意図的?
前編の方に、子役三人の想像図を載せてみました。
雑ですまんけど。
さあ、誰に天罰が下るのかなー
Posted by カノピコ at 2014.06.01 03:19 | 編集
イラストありがとう!!そうそう、彼女らこんな感じです!可愛い!!性格アレなのに。

ウルドちゃんはクソ生意気だけど悪い奴じゃないんだよー。彼女がどうやって高圧的な母親から自立してもっともっと魅力的な女の子になるのか、描けたらいいなあ。

キャラ崩壊?は意図的です。特に竜星なんだけど、これからもうちょっと表情豊かで親しみやすいキャラとして書いていきたいなあ、と思っています。テコ入れ万歳。
Posted by 沌夕 at 2014.06.01 21:23 | 編集
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