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2013.12.16

フラグベント 第四話 前編

ものすごくお待たせ致しました。やっと指が乗りまして、打ち始めました。
1年以上掛かってやっと続きをお届けします。4話目。話の進みが遅くて申し訳ありません。
後編はまたちょっと掛かるかも・・。とりあえず待たせ過ぎてるんで前編だけは上げます。

Frag"B"ent - フラグベント -

第四話 前編 「 夢とチャリ 」

前回までのあらすじっ!
ニートだかフリーターだかはっきりしねぇ
コンビニバイトの記憶ぶっ飛び青年、幕ノ内ベント!
公園で行き倒れて弁当もらった美人に一目ぼれしたり、
態度のデカイ仮面を拾ってみたり、
美人の営業する喫茶店で、怪しい三人組に何やら入会させられるしで、
毎日のほのほと暮らしているのでありました。
で?今日は一体どうすんの??



ベントは、アパートの粗末な畳の上で無く、
ソファらしきものに自分が腰掛けているのに気が付いた。

その部屋は、妙に暗い。
しかし、天井、壁に細かく星が描かれ、ぼんやりと間接的な明かりを発している。
そして中心にリアルな筆致で大きく月が描かれている。
片側が丸く抉られ、欠けて三日月になっていた。
目の前には相変わらず人一人飛び込んで行けそうな大きな画面の薄型テレビ。

あの部屋だ。
数日前、強盗事件の時。

テレビ画面は真っ暗で、なにも映像を流していない。
自分の情けない顔が暗い鏡の中に映り込む。照明のせいか顔の輪郭がはっきりしない。
目鼻の大体の位置がわかる程度だ。

どうして、何でまたここに・・?

テレビから視線を周りの壁に巡らす。
右を見て、左を。
その時、横目がテレビの中の鏡像を捉えた。

ぎょっとする。

鏡像は首を動かしていない。
真っ直ぐこちらを見つめたままだ。
そのまま〝そいつ〟は、口を開いた。
スピーカー部から、ノイズ混じりの声が聞こえる。

「よう、〝切れ端〟野郎。」

呆気にとられ、同時に少し体勢が後ずさった。
右手が何かつるっとした物に当たる。
目をやると、リモコンがそこにあった。

「つけろよ。退屈だろう?」

気味が悪くなりながらも、リモコンを構える。
一番左上の目立つ赤色のボタンを押した。

テレビの電源が入り、映像が流れ出す。

確かに画面越しに見ているはずなのに妙に生々しい。
自分の視点とテレビとがまるでくっついたかのようだ。

何処か屋内の風景。
朦々と、細かく砕かれた建材、砂埃が舞い上がっている。

その場に実際にいるのか?

視界が、視界がとにかく悪い。
目の前が白い。霞みがかってぼやけている。
ふと、上を向く。
柱や壁が奇妙に捻じくれて、即席の天井のようにその場を覆っているのだ。

次に耳に音が飛び込んでくる。

誰かの嗚咽だ。

横に。
すぐそばで、
誰かが 泣いていた。



ピピピピピピピピピ

カチッ。

「・・・・・もう壊さんよ・・」

破壊を免れた目覚まし時計を掴んで時刻を確認。
何とか間に合う時間に起床出来たようだ。
布団を跳ねのけ、くああっと伸びをする。

『がー・・ぐー・・・』

カメオが、目覚まし時計の向こう側に落ちていた。
目にあたるだろう部分が瞼でもあるかのように閉じられている。
・・・寝てんのか?これ。

「おい、カメオ。おいってば。」

指でコツコツとつついてみる。
すると、ぱちり と目が開いた。

『む?』

「お前も寝るって習慣あるの・・?」

『あるも何も。』

ふわりと奇妙な仮面が浮き上がり、

「何も?」

『俺、元人間じゃないかと。』

「え? そうなの?!」

『多分な。』

止め紐で、顔を掻くような仕草をしている。
と、ベントは一瞬、考え込んだかと思うと、カメオの両端をすばやく掴む。

『むおっ?!』

「あ、あのさ、俺に出来る事あったら言ってくれよ!そりゃ、頼り無いかもしれないけ、ど」

ぴしりと止め紐が顔に当たる。

『ばーか、何同情してやがんだ。大体、困ってねーし。』

「えー。だって俺より大変な目に合ってるんじゃないかと思って」

『あ、一つあるな』

「お、何?」

『また、乗っ取る。このままだと手足を動かす感覚も忘れちまうっての。』

「勘弁して下さい。・・・それで思い出した!今日さ、」

言い掛けて、目覚まし時計が目に入った。

「っと。のんびりしている場合では無い。」

今朝もドタバタ。
慌ただしく支度をし、寝癖も直さず部屋を飛び出す。
カメオも鞄に飛び込み、バイト先へ。

通り過ぎた通路の手すりには今日もカラスが一羽。
人が近付いても、逃げずにこちらを見つめている。

あの目は何かに似ているな。

ぼんやりとベントは思う。

そうだ。コンビニの、上についてる・・

 まるで、監視カメラみたいなんだ。



飯田知久矢(イイダ チクヤ)は、朝 登校への道を歩いていた。

教科書、ノート、借りた漫画、弁当その他諸々で膨れたリュックサックはなかなかの重量。
本って奴はどうして集まるとこんなに重いのか。
ロッカーを上手く活用すれば、荷物は減るらしいが
どうも自分はそんなに器用に使いこなせない。

俯き加減でせかせかと足を速める。

どうにも最近、ツイていない。
と言ってもまあ些細な事ばかりなのだが。
週刊漫画誌を立ち読もうと思ったコンビニは臨時休業。
日付と出席番号を照らし合わせる先生には見事に当てられる。
予習をやっていなかった訳ではないが、苦手な箇所で、案の定、苦い顔をされる。
弁当を忘れた日の、購買戦争にはもちろん負ける。
紅茶チーズフォンデュパンってこれ、挑戦的過ぎねぇか?

「今日は無事に過ごしたい・・」

溜め息をつきながら、今日の英語の暗唱テストの部分を考える。
嫌な予感がするんだよなあ。
横断歩道に差し掛かり、赤信号で足を止める。

向こう側に、長髪をなびかせながら(ん?振り乱し?)走る青年を見掛けた。
ごく最近、見た気がするんだよな。



「え、夢?」

「はい。今朝、見たんですよ。」

営業再開。今日もニコニコ、貴方の街の便利なお店、ファミリーセブン。
朝の客ラッシュをしのぎ、店長 山田氏とベントが喋っている。

「夢って確か、記憶から出来てるんだっけ。じゃあさ!」

「それが・・何とも。」

今朝の夢の話をする。謎の部屋については少々ぼかしておいた。

「・・・どういうこと?」

「さあ。」

「でもさあ、進展あったって事じゃないの?
まあ、じっくりやってきゃいいじゃない。若いんだし、時間ならあるでしょ!」

ぺんっと、背中を叩かれる。ひょろ長の上体が前に揺れた。

「はい。気長に思い出します・・。あ、そろそろお昼行って来ますー」

バタバタとバックヤードに掛けて行くベント。
山田氏は、お昼の客に備え、フライヤーの前で作業を始める。



「朦々と・・?」
「歪んでるって何じゃい。もっとちゃんと見て来い。」
「あれだ・・粉じん爆発って奴じゃねぇか?」

見守る会の面々と、今日もお昼を囲む。
4人共やはりメニューは同じ。
今日は、カレーを注文した。
結論:松花さんが作るのは何でも美味しい。

「爆発事件に巻き込まれて で、記憶も吹っ飛んだんじゃね?」
ペンキヤが、福神漬の容器を持ち上げながら意見を披露する。

「お。イイ線行ってるんじゃないですか?」
シチサンが、顎に手を当てながら同意。

「その横で泣いてるってどう言う事じゃ。」
パステルが渋い顔でその推理に待ったを掛ける。

「俺にも全然わかりません。」
まあ、こう言うしかあるまい。

3人寄れば文殊の何とやらだが、やはりこれだけではヒントが乏しい。

「まあ」
「気長に」
「行こうや」

結局ここでもそうなるのであった。
その時、喫茶店の外の歩道を通り過ぎるモノがあった。
それを見ながら、ベントが話題を変える。

「あ、俺 アレ欲しいなあって思うんですよ。乗り物。」

他3人もそれを目で追う。
次に、3人とも、眉毛をハの字に、憐れむような表情をベントに向ける。

「アレ・・って、お主〝自転車〟のことか?!」
「いややっぱ本当に記憶って飛んでるんだな・・」
「確かに、行動範囲も広がるし、良い刺激になるのでは?」

「自転車ってんですか、アレ。」

と、ここで空いたお皿を回収に松花さんがやって来た。

「お下げしますね・・。あの、お話を聞いてしまったんですけど」

「そうなんじゃよ。こ奴、自転車も知らなくて」

「確か、うちに長年、乗ってないのがあるんですよ」

松花さんが、カウンターに向かって少し声を張る。

「あのママチャリ、差し上げちゃってもいいんじゃなーい?」

今日もこちらに後ろ向きのバンダナ姿のマスターがこくりと頷く。

「父からも許可が出ました。処分に困ってたんで、もらって頂けるなら有り難いんですけど・・。
あ!ちゃんと乗れるかな・・大分錆びてしまっているんで。」

「え?え?」

予想外の話の転びに呆気にとられるベントである。

そこに注がれる3つの視線。

弁当だけではあきたらず、自転車までも・・!
見守る会、知らず知らずのうちに他を引き離してしまっているようだ。
やはり、こやつは要注意人物・・!
3人の結束は一層、堅くなったのであった。

「いやでも、そこまでお世話になる訳には」

何とか引き下がろうと試みる。
そんな、まさか頂いてしまう訳にはやっぱり・・

「待てぃ、ベントや。」

パステルがそれを制した。

「お主、行き倒れた前科もあろう?
それに、ま、病人みたいなもんじゃ。大人しくご厚意に甘えっちまいなさい。」

と、何と背中を押す。
他二人が慌てて小声で

(ちょ、ちょっとパステルさん。どう言う事ですか!)
(あいつだって何か目標あった方が仕事頑張れるんじゃ・・?)

(まあ待て。ワシに考えがあるのじゃ。)

「と言うわけじゃ。いつになるかわからんが、頭完全に治ったら精一杯お礼するんじゃな。」

ぐっと親指を立ててこちらにイイ顔を向けるパステル。
感極まってしまうベント君。

「それじゃあ、ちょっと店の裏手から持って来ますね。待ってて下さい。」

そう言って松花さんがエプロンをはずし、店を出て行く。

「み、皆さん、有難うございます・・。俺、俺、頑張って思い出します・・」

「これこれ、お礼言う相手を間違っておろう。」
「そ、そうですよ。」
「大袈裟だな、おい・・」

ほどなくして飯田珈琲店の入り口付近に、松花さんと一台の自転車が現れた。
ベントは席を立ち、外に出て行った。
まじまじと自転車を見ている。

深い緑色のフレーム。
茶色のハンドル。金属部分には所々、赤く錆が浮いている。
前面に目の荒いスチールかご。後部にはキャリア。ライトは手動切り替え。
変速機能はついていない。典型的なママチャリだ。
タイヤもパンクしておらず、乗るのに支障は無さそうだ。

「わあ・・。って俺なんかに本当にいいんですか?」

「はい。自転車屋さんに引き取ってもらうにもお金掛かっちゃいますし。
高さは・・どうかな。ちょっと乗ってみて下さい。」

松花さんに言われるがまま、自転車に跨る。

「あ、大丈夫そうですね!」

「これ・・足で踏むんですか?」

店の中から3人が様子を窺っている。

「ちぇっ。いい雰囲気ですよ。」
「おい、パステル。何だよ、考えってよ?」
「まあ、見ておれ・・」

ベントが自転車のペダルに足を掛けようとしている。

「あやつ・・自転車の〝じ〟の字も知らなかったじゃろ?つまりは・・」
「! そうか。」
「ん?何だよ。」

スタンドもはずされ、漕ごうとした。

「初めて自転車を買ってまず、やる事はなんです?ペンキヤさん。」
「あ。なるほど」

足も地面から離し、支えを失った自転車は乗ってるベント毎、右に大きく傾ぐ。

「え。」

そのまま横倒しになった。

「最初っから乗れるとは限らねぇよなあ・・」
「ふっふっふ。松花さんの前で無様に転ぶがよい・・!」
「パステルさんも結構、黒いんですね。」

がっしゃーん。

空回る車輪。派手な音が辺りに響く。
慌てて手を地面についたが、歩道の石畳にしたかかに膝、腹を打つ。
ついでに手の平も少々、擦りむいた。

「だ、大丈夫ですか?!す、すみません。初めて乗られるんでしたのに・・私、すっかり・・」

「あったた・・。これ、いきなり乗れるんじゃないんですね・・」

松花さんが慌ててベントに乗ってる自転車を起こし、スタンドを掛ける。
そして、起きあがろうとするベントに手を差し伸べる。

「ごめんなさい・・。もう少し、気を配るべきでしたね・・立てますか?」

「ああいや、俺も知らな過ぎたし・・松花さんのせいじゃ・・ああ、すみません。」

それを見つめる3人。

「あれ?これはこれで良い雰囲気じゃな。」
「手!手ぇ触ってる!」
「はっ・・!このままではまずい・・」

起きあがったと同時に手の平に鈍い痛み。見ると、血が出ていた。
顔を上げれば、松花さんがこれまた申し訳無さそうな顔でその手を見つめている。

「あ、血が出てますよ! ちょっと待ってて下さい。」

一旦、店に戻る松花さん。
ぽけっと待ってるベント君。

すぐに救急箱を持った松花さんが現場に戻って来た。

「こ、これは・・やっぱり!」
「おい、パステル。どう言う事だ?!」
「ぬぅ・・ぬかったわ・・」

ぺこぺこしながら松花さんの手当を受けるベント君。
手当と言っても消毒液を塗って、絆創膏を貼る簡単なもの。

「「「看病イベント・・・!」」」

気付けば、喫茶店の硝子窓に張り付いている3人。

「やはり・・あやつ何か〝持っている〟な・・!」
「もうこれ、僕ら追いつけるんですか?」
「迸る女子力・・!何てこった。」

敗北の味を知る3人であった。
せこいマネをした報いなのか。神様、何て仕打ちなんだろう。

そうこうしてると、注目の2人が帰ってくる。

「・・・で、練習されるなら、河原の土手なんかが広くていいんじゃないでしょうか?」
「あ、そうですね!何から何まですみません。」
「ふふっ。あんまりお怪我をなさらないようにして下さいね」
「あ、はい。重々気を付けます・・。絆創膏持って行きます・・」

テーブルに戻ると、3人が何やら葬式帰りのような顔をしていた。

「あれ?ど、どうしたんですか、皆さん・・?」

「・・・ワシらの負けじゃよ。」
「ええ、今回は完敗です。」
「練習・・頑張れよ。」

「え?・・あ、はい。ああっ!そろそろ昼休憩終わるんで!」

「ワシも家で再放送見る時間じゃ。」
「ゼミあるんで。自転車、ちゃんと引いて持って行くんですよ?」
「店番。」

こうしてこの日の昼は解散となった。
手の平はひりひりするけど、るんるんと自転車を引いてコンビニまで戻るベントであった。


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コメント遅くなり申し訳ない…!

松花さんは相変わらず素敵だ。お弁当に自転車、そろそろベントの男らしさを見せないといけない頃?三人組もなんだかんだベントをからかいつつ優しい のがいい。弟さんの名前、知久矢(not知久屋)で決まり?どんなキャラになるんでしょう、楽しみです。
ベントの夢も気になりますが。何か起こる予感。
Posted by 沌夕 at 2013.12.21 09:38 | 編集
読んで下さり誠にあざーっす!
更新亀速度過ぎて申し訳ございません。
作者自体も細かい設定飛んでて、全話確認しながらの執筆です、ハイ。
松花さんは、同性から見ても素敵な女性に見えたらいいなっと思って描いてはいるんですが・・。
ベント君は確かにそろそろイイとこ見せないとですよね!
夢描写は気合入れました。ああ言う妖しいシーン大好物です。
後編も只今、書いてはおります。年を跨ぐかもしれません・・本当ゴメン・・。
Posted by カノピコ at 2013.12.22 23:35 | 編集
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