--.--.--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2014.02.28

マジラバ12話:エレコン・ロリコン・プロのプライド:前編

元ネタは勿論、ハリポタの妖女シスターズ(weird sisters)。

「ロケ中におかしな事が起こる?」
レンガ屋敷の、調度品などを洋風に統一した方の応接間で、竜星は依頼人に聞き返す。竜星の向かいに座り、ふわふわと長い髪を緩やかに束ねて大きなサングラスを掛けた女は頷いた。
「ええ、カメラが突然壊れたり窓が割れたり…きっと悪質なファンの仕業でしょう。昨日なんか割れた窓ガラスの破片でスタッフが大怪我をしましてね、娘の身になにかあってからでは遅いので、今日はお伺いしましたの。」

「珍しいね、天魔連の任務じゃなくて一般人から直接仕事の依頼が入るなんて」
部屋の隅で、紅茶を載せてきた盆を抱えて立っていた鈴音が、肩の上にのっている小さな黒い猫又、ホーリーナイトに耳打ちする。
「一級魔導士はクソ高いからめったにないけどな。流石げーのーじん」
ホーリーが答えた。そして、二人してゴージャスな雰囲気を漂わせながら紅茶を啜る客人を盗み見た。
「でも、誰だっけ?見たことあるようなないような…」

「娘さんと仰いますと…どなたですか?」
タイミング良く、竜星が依頼人に訊いてくれた。依頼人は少し失望したかのような顔をしたが、溜め息一つついて答えてくれた。
「ご存知かと思いましたが…私、幼女シスターズのウルドのマネージャーで、彼女の母でございます。名前は百瀬真知子」
「よ、よ、幼女シスターズううぅぅ?!」
ホーリーが驚いたように叫んだ。
「知ってるの?」
鈴音が訊いた。
「知ってるも何も、超有名だってばさ。」
 
幼女シスターズは、三年前に彗星のごとく現れたアイドルグループで、メンバーのウルド、スクルド、ベルダンディは現在、弱冠12歳、11歳、10歳。キュートなロリっ娘アイドルにそぐわぬ歌唱力と演技力がウケてその若さにしてトップアイドルの名を欲しいままにする。特にリーダーのウルドは舞台に映画にドラマにバラエティーと縦横無尽に活躍し、赤子と動物以外のどんな役でも完璧に演じられるただ一人の女優と言われている。

「そのウルドの母親だって…ま、ま、マジかよ…」
大物芸能人の縁者の突然の登場に、すっかりビビってしまったホーリーの様子に機嫌を直したらしい百瀬は、笑顔で竜星に向き直る。
「つきましては、暫くウルドの護衛をお願いしたいのです。謝礼は言い値で払いますわ。」

そんなことを言われて、つい引き受けてしまったのが昨日のこと。竜星と鈴音、ホーリーは朝から煩いチビたちと楽屋にすし詰めにされる羽目になってしまった。初めの内は日本人なら誰もが知っているトップアイドルたちを前にしてきゃいきゃいはしゃいでいたホーリーも、彼女たちのかしましいお喋りにうんざりして、いつしか相槌も打たずに黙りこくるようになっていた。
「ねえお兄さん、一級魔導士なんでしょう、何か凄い魔法やってみせてよ、部屋中銀色の薔薇だらけにするとかさあ」
銀髪をベリーショートにして、両耳に大きな星のイヤリングをつけたウルドがしつこくせがむ。
「だが断る。」
左腕に絡みついてきたウルドを振り払い、竜星は素気なく言う。
「一級魔導士っていったらあたしたちなんか叶わないくらい沢山魔力持ってるんでしょ?大して減るもんじゃなし」
茶色いふわふわした髪を縦ロールのツインテールにして、細かい星の飾りを巻き付けたベルダンディが、今度は右腕に絡みついてくる。
「やかましいガキンチョ、文句ならおめーのリーダーに言え。場合によっちゃアクション映画も真っ青な大乱闘になるんだから」
竜星はベルダンディも振り払う。ぷう、と頬を膨らませたベルダンディはソファから立ち上がり、ウルドの隣に移動した。ウルドとベルダンディはわざとらしく顔を見合わせ、竜星について好き勝手なことを言い出した。
「ちょっとくらいいーじゃんねー。あ、もしかして裏口とかで一級魔導士取ったから実は大した魔法使えないとか!」
「運良くここまで来れちゃったけど引っ込みつかなくて却って困ってるとか!!才能ない人って可哀想~」
「あのな…」
「ウルド、そういう言い方は…」
竜星が言い返す前に、ストレートボブに三日月の飾りのついたピンをつけたスクルドが窘めるように言う。
「なぁによあんた、リーダーに文句言うつもりなの?トーク出来ない癖に。」
「…」
ウルドに高圧的に罵られて、スクルドは早くも黙りこくってしまう。見かねた鈴音がやや鋭い口調でウルドを諫めた。
「ウルドちゃん、友達いじめちゃダメでしょ」
「オマケは黙ってなよ」
ウルドは鈴音の方を見もせずに、さらりと酷い台詞を吐く。
「誰がオマケだこのメスガキゃあ」
「何か…イメージと違うなあ…」
あまりにワガママでいじめっ子なウルドの素の姿に失望したらしいホーリーが、鈴音の影に隠れてこっそり呟いた。

険悪な空気が楽屋中をむしばみ始めたその時、マネージャーにして母親の百瀬が楽屋のドアを開けた。
「ウルド、出番よ。早く支度なさい」
百瀬が冷徹な声でウルドを呼ぶ。
「…はい」
鈴音は、ウルドを取り巻く空気がすうっと変化したのを感じ取った。ウルドは機械じみた様子でソファから
立ち上がり、ポケットからピンク色の可愛いコンパクトを取り出して、開いた。ぱあっと七色の光がほとばしり、ウルドを包んだと思うと次の瞬間、ウルドは金糸で飾られた黒いベールを被った、古代中東の驕慢なお姫様になっていた。

「今日はちょっと『ワイルド』に…竜星さんとオマケさんと猫ちゃん、あんたたちも来るんでしょ?」
表紙に『サロメ』と乱雑な手書き文字で書かれた脚本を持ち、透けるような薄いベールを翻してウルドは年に合わない程に蠱惑的に微笑んだ。

「お前の唇に口づけしたよ、ヨカナーン!」
ウルド扮するサロメが、血糊の滴る人形の生首を抱え、歓喜に満ち溢れた声を上げる。醜悪なほど純粋なお姫様の、まるで欲しかった玩具を手に入れて喜ぶかのように人の命を扱う様に、そしてその残虐さと凄艶さに、父王や兵士達、カメラマンやスタッフたちは戦慄した。
「はいカット!」
監督の声が、その場に居合わせた人々の意識を現実に引き戻した。
「ぅあ?…はいはい」
「お…俺たちが東京の寂れたスタジオにいてカメラ回してることも忘れかけてたぜ…」
スタッフや共演者たちは、各々頭を振ったり、ぱんぱんと両頬を叩いたりして、ここが現実だと再確認しているようだった。
「おいおい~、そんなんでちゃんと撮れてるのか?つい呑まれちゃうのも解るけどさー」
監督が豪快に笑いながら言う。
「さっすがウルド、オレはこれが観たかったんだ!」
さっきまでウルドの素行に失望していたことも忘れ果てたホーリーが、惜しみない賞賛の声を送る。
鈴音は単純、と心の中だけで思うだけに留め、ニコニコ笑っていた。
「ガキに何ちゅー演目やらせるんだ」
竜星がこっそりツッコミを入れた。
「ねえ。教育に悪いような…」
鈴音も竜星のツッコミに同意した。

確かに、ウルドの演技は恐ろしいほど素晴らしかったけど…

「わかってないなあ神崎竜星くん!!」
監督が大袈裟に首を横に振った。それから、暑苦しく語り始めた。
「まるで傲慢な淫婦のように誤解されがちだが、サロメは本当の恋も知らない純粋な少女なのだ!ただ育った環境が歪み過ぎてて愛情の表現方法を知らないだけで…そんなサロメを演ずるに一番ふさわしい人材は誰だと思うかい?サロメと同じ、ローティーンの少女だよ!!今まではサロメを演じられるだけの演技力を持った少女が居なかったから泣く泣くトウの立ったオバンを登用してただけで、容姿も演技力も申し分ないウルドにサロメをやってもらえればそんな必要も無くなるってことさ!この映画はきっと歴史に刻まれる名作になるぞ。お空のオスカー・ワイルドも喜んでいるだろう。彼が望んだ美少女とグロのマリアージュがここに完成したのだ!年端も行かぬ純粋な美少女のっ、そのさくらんぼ色の唇が侮蔑的に男の命を踏みにじる時そこに至上のエロスが」
「怖いよ~怖いよ~」
鈴音がついにしくしく泣き出した。鈴音を支えてやりながら竜星は呟いた。
「俺には多分一生理解できん…」

「盛り上がっているとこ悪いけど」
百瀬真知子が威圧的な態度でスタジオを横切って監督の前にやってきた。
「やり直しよ、最初から。これじゃあ歴史に名を刻むどころか世界の笑い物よ。私の娘がラジー賞なんて取ったら自決してやるから」
「は?しかし百瀬さん、今日のは今までのウルドの演技の中でも最後だったと思いますが…だよな、みんな」
監督は他のスタッフに同意を求める。
どのスタッフも一様に頷いた。百瀬はイライラと吐き捨てた。
「あーっ、これだから三流と仕事すんのはイヤなのよ!ウルド、貴女は納得してないの、そうでしょう?」
「…うん」
突然話を振られたウルドは曖昧に肯定した。
「うんじゃなくて、どんな風に納得してないのか、事細かにこのオッサンたちに教えてやりなさい!」
「サロメらしさとか…色々足りなかったです。もう少し無邪気っぽくするべきで」
「貴女の演技じゃないのよ全くどいつもこいつもバカばっかり!」
百瀬はウルドに話を降っておきながら、自分でウルドの言葉を中断してしまった。
「まず父王役、サロメが首を所望した時のおののき方がわざとらしすぎる。王妃役、いくらセリフがないからって何の表情も出さずに突っ立ってるのはどうなの学芸会の木じゃあるまいし。何よりヨカナーン役、不細工過ぎてウルドのサロメと絶望的に釣り合わなさすぎる!役者変えるか整形して出直してきなさい!あんたたち三流の大根役者どものせいで私の娘まで調子が狂ってる!!…わかったらやり直しよ」
百瀬の横暴な意見に、監督はじめスタッフ全員が文句たらたらながら持ち場に戻る。鈴音が横目で見たウルドの横顔は、石像のように固く冷たかった。
「…何だありゃ」
竜星が呆れ果てて言った。

その時、パン!!
鋭い音がして、カメラのレンズが数台爆発して砕け散った。

「またなの?!」
百瀬がヒステリックに叫んだ。
「誰がやってるの、出てらっしゃい!こっちには天魔連の一級魔導士が居るのよ?!!」

しかし、誰も出ては来なかった。
竜星も杖を振り、攻撃的な魔力を感知する銀霞を仕掛けてみるが、誰も引っかからなかった。

「ふーん」
竜星は、意味ありげに呟いた。

140601_030625.png

スポンサーサイト
Posted at 23:05 | 未分類 | COM(0) | TB(0) |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。