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2013.04.23

マジラバ第十一話(第二部一話) 十六歳たちの葛藤?てんたまスキャンダル!! 後編

鈴音が目を覚ましたとき、両手首と両足首をガムテープで縛られ、椅子に座らされていた。唯一自由に動かせるらしい首をきょときょとと動かすと、どうやらここは古びた空き教室の一つらしい。乱雑に積み上げられた机や椅子やダンボール箱はうっすらと埃っぽい。先ほどよりは明らかに傾いて色が濃くなった陽の光が曇った窓から斜めに差し込んでくる。そして、目の前にはマッシュルームみたいな髪型に絵に書いた様なぐるぐるメガネの少年と、派手な色の金髪を箒みたいに逆立てて制服を着崩した全身で「突っ張ってますよ」とアピールしているような少年が仁王立ちしていた。
「起きましたか、鬼塚鈴音」
ぐるぐるメガネの方が腕を組んだまま鈴音を見下ろした。
「君のことは知っている、神崎竜星の恋人だということもね。」
「…それはどこの鬼塚鈴音ですか…」
ザラにある名前じゃなかろーけど、と鈴音はため息をつく。金髪の方が刑事ドラマの取り調べよろしく、バンと机を叩く。
「しらばっくれても無駄だ、神崎は確かに言ったぜ、『裸を見た仲』とな!!」
「えっ、ええー??!!」
思いがけない金髪の、セクハラの域に達している発言に、鈴音は一瞬真っ赤になって首を激しく横に振ったが、はたと思い当たった。
「ああ、あれか。任務でちょっとした事故があって…決してやましいことはございません。」
「えっ、ええー??!!」
今度は少年二人組がびっくりする番だった。
「んなこと言ってますよ、どうしますモロボシくん」
「いやいやヒグチ、この子がそう認識していても神崎は違うことだって有り得るだろう。裸見たのが事実なら神崎がヤロウである以上全くの平常心でこの子に接することは決してできない筈だ、決してな!!」
「なんでそんなパワフルに言うんですか…」
「ていうか何なんですかあなたたち、いきなり人のことガムテープでぐるぐる巻きにしたかと思ったら下世話なインタビューばっかりしてきて。あとホーリーはどこ?」
全く恐れる様子を見せず、一気にこれだけのことを質問してきた鈴音に、諸星、樋口は心底驚いたような顔をした。
「怖くないのか?」
「あいにくこんな目にあったことが不本意ながら二三回くらいはあって、他の女の子よりは慣れてると思います。

「あ、そう…」
樋口がもうなんて返答すればいいのかわからなくなって、ただそう答えた。
「あと猫叉ならあの柱時計の中だ」
諸星が黒板のそばに掛かっている壊れた小さい柱時計を指差した。確かに、ホーリーナイトが透明な扉の向こうに閉じ込められて、おそらくは『出して出して』と暴れていた。
「で、あなたたちは一体何がしたいわけ?」
ホーリーがとりあえずは無事なのを確認して安心したのか、鈴音が再度訊いた。諸星はにやりと笑った。
「いい質問だ。俺たちは、神崎に恨みを持つ者だ。」
「寸でのところで一級魔導士を奪われましたしね…」
「それだけじゃない、あいつは俺の彼女のハートも奪った」
「まだ気にしてるんですか、ちょっとみっともないですね」
「うるせえ!!とにかく、ここらであいつにガツンと復讐してやらなけりゃ気がすまねえんだ!神崎の現彼女…?のお前をふん捕まえて、あいつの目の前でまあ色々とりあえずほっぺにちゅーとかからぶちかます!!強力な結界を張って、あいつが手を出せないようにしてな。あいつが返してくれと泣きついてきたら土下座でも一発芸でもさせて、その様子をマジカメ(マジカルカメラの意)に撮影してダビングして天魔連中に配ってやるのさあああ!!!」
「…」
鈴音は諸星の独演を黙って聞いていたが、最後にプッと噴き出した。

人をあざ笑うことはしない主義だけど。だけど。

「何がおかしい?」
諸星が鈴音に詰め寄った。
「だってそんな、えーと、悪いけど雑な計画で、竜星が思い通りになるわけないじゃないですか。言ったとおり、竜星は私の魔法の師匠で恋人じゃないし。」
「それに、あなたたちじゃ竜星に勝てないと思いますよ」
「へえ、なんでそう思う?」
諸星は鼻で笑うように鈴音に訊いた。樋口は、少しやばいな、と思い始めた。この口調からして、相方はこの子の挑発的な物言いに腹を立てている。これ以上この子を傷つけるつもりは自分にはなかったが、モロボシくんはどうだろう?見た目通り、結構怒りっぽいのだ。
「正攻法じゃ竜星に勝てないと思うから、こんな姑息な手しか使えないんでしょ?でも、竜星にそういう手は通用しないです。姑息さでも多分あいつの方が上なので。」
「…師匠でも恋人でも酷い言いようですね…」
樋口が諸星に注意しながら鈴音にツッコミを入れる。諸星は、引きつった笑顔とも言えない笑顔を必死に顔に貼り付けて保っていたが、予想通り鈴音の言葉にキレているようだ。乱暴な足取りで、椅子に縛り付けられて動けない鈴音に近づく。
「お前、後先考えて喋ってるか?女だからって俺らがお前にこれ以上何もしないとでも思ってるのか?」
鈴音は諸星を見上げた。正確にはその向こうを見ていた。

もう少し、ってとこか…

「天魔連は、階級付き魔導士が任務以外でのいかなる場合も、同属(魔法使い)を傷つけることは許さない、というルールがあるようですね。」
「お前の師匠がそれを守っているとでも?少なくとも俺は守る価値のないルールだと考えてるがな。」
「そうですか、ならどうぞ。ただバレないように…」
「どう言う意味だ…?」
「諸星さんも樋口さんも、悪いことするにはちょっとツメが甘いみたいに思えるから。私がそうしようと思ったら、大声で叫んで助けを求めることもできたんですよ?」
樋口はハッとした。しかし、諸星は怒りを込めて壁に手を着いた。ちょうど、鈴音を壁に押し付ける形だ。
「じゃあ、今から黙らせてやるよ…」
「…最後にもう一つ。」
鈴音は壁と諸星の腕に閉じ込められながら笑顔で言った。
「妖魔をナメない方が、いいですよ」
諸星、樋口はばっと振り向いた。杖を慌てて召喚して振り上げたが、時はすでに遅し。ホーリーは華麗に時計から飛び出して宙に受けんでいた。口に金色の小さな鍵を咥えている。クリスマス前に趣味の通販で買った、『どこでもキー』だ。
持っててくれてよかった。
鈴音が内心安堵したのは内緒の話だ。
ホーリーは黒い焔とともに、少年の姿に化けた。攻撃モードで、両手の爪が鉤のように鋭く長い。
「よくも閉じ込めてくれたなっ!!」
ホーリーが怒りの一撃をぶつける。積み上げられた机やパイプ椅子が一瞬で切り裂かれた。ついでに、鈴音を縛り付けていたガムテープも、切り離される。
「しまっ…」
諸星、樋口がシンクロナイズドスイミングより正確に、同時に鈴音を振り返る。
この仲の良さがこの二人の欠点かな。
鈴音は思いながら、杖を振るった。ホーリーは鉤爪がぎらりと光る右手を振り上げた。魔力で持ち上がった重くて硬そうな材質で出来た教壇が樋口の顔面に、鉤爪の刃ではない部分が諸星の後頭部にそれぞれ思いっきりぶち当たる。諸星、樋口は白目を剥いて埃だらけの床に倒れ伏した。

「あー、怖かったぁ…」
鈴音は今更早鐘のように打ちまくる左胸を押さえながら、猫型に戻ったホーリーを抱きかかえて足早に教室を後にする。
「鈴音、凄い無茶したなあ!!二人の注意を引くのはいいけど、もっとマシな話題なかったのかよ!!すんげーヒヤヒヤしたんだぜ?それにオレがもし『どこでもキー』持ってなかったらどうしてたんだよ…」
ホーリーが驚いたように言う。鈴音はごめんごめん、と笑う。
「ネクタイの裏が一瞬キラって光ったから、心配してなかったわよ」
「素直に竜星呼べばよかったじゃないか!あいつらがほっぺにちゅーする前に伸してくれてただろうに。あ、あるいは竜星の知られざる恥ずかしい一面を披露する代わりに見逃してもらうとか」
ホーリーはまだ恐怖が抜けきれていないようで、校舎を出る頃になってもまだまくし立てていた。
「恥ずかしい一面は良い考えだわねえ。諸星とかいう人、喜んで私を開放してくれたかもしれないのに」
鈴音は軽やかに笑う。
「鈴音一体、どうしちゃったんだよ…」
ホーリーは困惑していた。
「なるべく、自分の身はひとりで守れるようになりたいのさー。」
鈴音はふんわりと言った。

「いててて…なんつー女だ、師匠が師匠なら弟子も弟子…」
諸星はガンガン痛む後頭部を押さえながらむくりと起き上がった。相方の樋口は既に立ち上がっていた。ただしトレードマークのぐるぐるメガネのレンズの片方が、直したばかりなのにまたバリバリに割れて、鼻の穴の両方から止めどない赤い血をたらたらと流れるままにしていた。
「ヒグチ、大丈夫か?保健室に行こう」
しかし、樋口は動かない。諸星が怪訝に思ったその時、樋口は頬を紅潮させて叫んだ。
「何あれ超カッコイイ超カワイイ!!正直ヒグチ、惚れました!鬼塚鈴音!!」
「え…?教壇とかぶつけられたのに、何お前、そーゆーシュミ?」
諸星が興奮する樋口を、生まれて初めて目にする珍しい生き物(爬虫類系)のように見る。
「見るからにおっかないモロボシくんに詰め寄られても動じないあの度胸、あの眼差し、あの機転!!神崎のそばに置いておくなんて勿体無い!ねえモロボシくん、本格的にあの子奪りにいきますから、手伝ってください!そうしたら、鞠絵さんの復讐もできますよ!」
「はぁ…」
諸星があきれ果てたようにいつになくハイテンションな樋口を見つめる。そして、いつの間にかもう一人メンバーが増えていることに気づく。
「よく言った。樋口、とか言ったか。生憎オレも鈴音ちゃんのことが好きだが、しばらくは協力してやろうじゃないか。打倒神崎だ。」
白衣を羽織り、どう見ても邪魔くさい巨大なフラスコを背負った男。俺らと同じ、鼻先で一級魔導士を奪われた男。不二里ナツメ。
「鈴音ちゃん親衛隊兼打倒神崎同盟の結成ですね。頑張りましょう、三人で」
不二里、樋口は肩を叩き合っている。肩たたきの波は何故か諸星にも伝染してきた。

打倒神崎はいいけど、何でこんなことになっちまったんだ?

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Posted at 02:51 | マダム沌夕 | COM(0) | TB(0) |
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