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2010.12.04

マジラバ番外編,Hory´s Holly Night  後編

 日付が変わる前くらいには、確かに燦然と闇夜で輝いていたオリオン座がうっすらとした雪雲に覆い隠されてしまっている。その代わりに粉雪がしんしんと降り始め、恋人たちがもてはやすホワイトクリスマスの通りに燈京を白く染め上げつつあった。頭上には雪雲、足元には大都会の街明かり、サンタクロースのように聖夜とホーリーは夜空を漂っていた。
「聖夜…」
人間型に変身したホーリーはまっすぐ虚空を睨んだままもりもりと進むガールフレンドに恐る恐る話しかけた。
「あの、オレ寒いんだけど…」
聖夜はやっと気付く。ああごめん、と口では謝りつつも聖夜は笑っていた。
「それじゃあ寒いの決まってるじゃん。そんな半ズボンで脚出してさ。どうせ服も変身の一部なら暖かいのにすればいいのに」
ホーリーは、聖夜は良いのかよと言おうとして止める。そういやこの子、幽霊だった。感情や人格はあっても、体の感覚は無い。
「…自由だね。」
今夜は特別に、七色にライトアップされた日本一高い建物、燈京タワーのてっぺんに立ちながら、聖夜は呟いた。
「聖夜もホーリーも、自由だね…」
「…」
べ、別にあんなのは日常茶飯事だし、オレにとってはそんなびっくりするほど残酷な事じゃないし、死にかけたとかそういうことは無いからあんまり深刻に受け止めないでほしいんだけど…
なんだかんだ言って竜星や鈴音にある程度の愛情を持つホーリーは困ったように口をパクパクさせた末に、只一言だけ返した。
「そうだな。」
聖夜はやっぱり少し寂しそうに微笑んだ。
「さーて…折角二人きりだし…ホーリーどっかに連れてってよ!私が今まで行けなかったとこ、どこでも連れてってよ。」
頬笑みから満面の笑みに、笑顔の大きさを変えながら聖夜は明るく言った。

知ってるデートスポット…そんなに多くないけど。
まずは、
「翅黒動物園!一度来てみたかったんだ。だって日本でユニコーンが見られるのここだけでしょ?」
閉園の看板も入場口も何の障害にもならない。聖夜とホーリーは、するりと鉄柵を通り抜けていざ、真夜中の動物園へ。所々に見られる広葉樹には、コードで連ねられた色とりどりの豆電球が巻きつけられてぱちぱちと明滅していたが、今それを見てくれる人は誰も居ない。お客も係員も居ない無人の、真っ暗な動物園で、却って動物たちは元気に檻の中を歩き回っていた。人の声はしないのに、動物たちの唸り声や吠える声は昼間よりずっとたくさん聞こえる。ホーリー自身は人間が見たら猫、つまり動物だと見た目でそう分類されてしまう事が多いのだが、こうした状況を不気味だと考えてしまう以上、やっぱり自分は人間の方に近いのかもしれない。それにたいして人間、聖夜は…
「すごいっ!!不死鳥があんなふうに飛ぶとこ初めて見た!みてホーリー、尻尾から花火みたいのが出てるよ!!綺麗…」
「あのユニコーンボクシングしてるよ?やだぁ、おっさん臭い、ユニコーンってもっと優雅な生き物かと思ってた」
聖夜は今まで身体が思うように動かなかった反動か、思う存分はしゃぎまくり、楽しそうだった。不死鳥の次はユニコーン、ユニコーンの次は謎めいたチェシャ猫、と次から次へと檻を移動して、その度に歓声を上げている。
「あれホーリーなんで猫に戻ってんの」
「…なんか怖いんだもん。それに人型で見つかりでもしたら問題だし。」
「男の子のくせに情けないねー。男なら女の子守らなきゃでしょ。」
聖夜は偉そうにまだ薄い胸を張り、新たな檻へと掛けて行った。あんな元気なら例えライオンが襲ってきても、一本背負い投げで撃退しそうだ。…オレが惚れたのは、病弱で、大人しくて、もうちょっと寂しそうな少女だったんだが…
「わー、今時の狸ってビール飲むんだ?!ねえ君、聖夜に化けてみてよ!え、やだって?ホーリーこいつ生意気なんだけど!!」
でも、ホーリーは苦笑いしてため息を吐く。あんなに楽しそうなら、いいか。思い切り笑ってるなら、その方が良いか。
それから聖夜は相変わらず動物たちにちょっかい出して、隠しカメラを見つけてピースして、ホーリーはそんな聖夜に突っ込み入れたり、追いかけて止めようとしたり、それがそろそろ動物には飽きてきた聖夜お嬢様のご意向で鬼ごっこになってしまったりと楽しい時間を過ごした。それからかなりの時間がたって、鬼ごっこがさらに、ホーリーも知らないうちにかくれんぼに変貌していたらしく、三十分前から姿を見せない聖夜を息も絶え絶えになってホーリーは探していた。
「聖夜ー、出て来てくれよー。おいてっちゃうぞー。」
長い事探し回った甲斐あって、ホーリーは程無くして、ヤマタノオロチ在中の特大な檻の前に立って食い入るように中にとぐろを巻いている、当動物園の主を見つめていた聖夜を発見した。
「つーかまーえ…」
「ホーリー、どこでもキーでこの子たち自由にしてやったら楽しそうじゃない?」
「はぁ?」
聖夜は心底楽しそうにオロチを見つめていた。
「私はもう幽霊だから食われなくて済むし。頼んだら真っ先にあいつらを食べてくれるかな。」
あいつら、が誰を指しているか解ってホーリーは胸が締め付けられるようだった。やっぱりさっきの会話、聞いていたのか。そうでなくても不治の病の娘を仕事に託けて放っておいた、それだけで娘に『食い殺されてしまえ』と思われるには十分なのか。ホーリーはぐでーっと聖夜の足元に横たわる。背中にひんやり冷たい感触がした。
「勘弁してくれよ…聖夜は良くてもオレは食われてしまうんだぜそんなことしたら。」
聖夜はカラカラと何の邪気も含ませずに笑った。
「そうだよね、ごめんねホーリー、冗談よ。アメリカンジョーク。」
…どこがアメリカン?

次は、ゲームセンター。これまた真っ暗で誰も居ないだだっ広い中、また人型に変身したホーリーは聖夜の望みを叶えるべくUFOキャッチャーに興じていた。
「このっ、もう、ちょっと、なんだけどなあ…」
「上手だよ!私どうやって動かすのかわかんないもん。ただ、アームが悪いのよねきっと。もう一回やってみて、今度は上手くいくから」
ホーリーは聖夜の言うとおり、もう一回レバーを握る。何故かマシーンは、無一文の二人を自由に遊ばせてくれた。ぐいっと右に引いて、青いウサギの頭上にアームを持って行く。それからレバーを下に引き、ウサギの頭をむんずと掴もうと奮闘する。この掴むのが大変なんだ。掴んでも、グラグラ不安定で、ぬいぐるみをすり抜けてしまう。そこで、聖夜はアームの先を穴を穿ちたいかのように見つめた。烈しく熱いまなざしで、その癖何も意識していないような、不思議な見つめ方であった。ホーリーはレバーを上に引く。ゆっくり、アームはぬいぐるみを掴んだまま上に上がる。今までに無いほどしっかりした掴み方だ。これは、イケるか?ホーリーはレバーを左に引く。やっぱりぬいぐるみはアームにくっついたままだ。仕上げに、レバーを下に引いた。ぬいぐるみは、ことんと穴に落ち、受取口を通って出てきた。やった。
ホーリーはぬいぐるみを抱いて聖夜に渡す。聖夜は実体が無いので何かに触れることが出来ないが、嬉しそうに青いウサギを自分の側の空中に浮かせた。
「初めての共同作業だね!」
「古いなその表現!」

次は飲食店。家族全員寝静まった三浦亭に忍び込む。染みついたドミグラスソースの匂いに加え、クリスマスの特別メニューのローストチキンの香ばしい匂いがまだ残っている。ホーリーは音を立てないように冷蔵庫を漁る。目指すはイチゴ、黄桃、メロンと言ったカラフルなカットフルーツ。それと生クリーム。業務用バニラアイスの巨大な箱。聖夜は食器棚から一番大きなどんぶりを出してきて、よたよた危なっかしそうに宙に浮かせて運んできた。ざらざらっとシリアルをどんぶりの底に詰め、アイスと生クリームと、果物を適当にぶちこんだ。てっぺんの飾りつけは比較的丁寧にやった。フルーツソース…は見つからなかったので、ジャムを一瓶、でんっと開けて代わりにした。ウエハースとポッキーとポテトチップスを悪魔召還の儀式か何かのように生クリームで出来た醜悪な山に刺して、巨大パフェ完成。
「いっただっきまー…」
「こらぁ、人んちでこんな夜中にごそごそと何やってるだーっ!!」
あえなく店主に見つかった。ホーリーと聖夜はスプーンを放り出して一目散に逃げ出した。

「あー楽しかった。一晩でこんなに色々したの初めて」
「そうだな」
一層冷える明け方間近の空気の中、公園の噴水の傍で二人は笑い合う。聖夜の意外な一面をたくさん見てしまい、振り回されたのは確かだけどホーリーも楽しかった。普段じゃこんなこと、なかなか出来ない。
しかし、誰も居ない何も居ない、余りに静かで冷たい未明の公園で、会話も無く二人突っ立っていると、興奮した脳がすうっと冷えて行くのが解った。ホーリーは切り出した。
「聖夜、これからどうするんだよ。このままって訳にもいかないだろ」
「…」
聖夜はホーリーの言葉が遠まわしに成仏を促すものだと直感的に悟った。そして、ホーリーも私を裏切るんだ、と思った。ホーリーも、私がこの世からいなくなってしまえばいいと思ってるんだ。あんなに、あんなに楽しそうに一晩付き合ってくれたのに。半透明な身体が、真っ黒になるかと思うくらい深い憎しみが意識を染めて行くのがわかる。残念だけど、私、まだ死にたくないの。しかし聖夜は、そんな感情は表情には出さずに、のんびりと言った。
「そうだなぁ…ホーリーと駆け落ちしたい、なんて。」
「え…」
困惑と照れで頬を染めながら、ホーリーは聖夜の横顔を見つめる。聖夜は再び星と月が煌々と照らす夜空を見上げながら、それが何を意味するのか気付いていない振りをして言った。
「私今夜、生きてる間には無かったくらいすごく楽しかったの。全部ホーリーが居たからだと思うわ。ずっとずっと、ホーリーと居たい。ホーリーと一緒なら、どこへだって行けると思うんだ。一緒に、来てくれる?」
「オレは…」
「ホーリーだって、あんなふうに家の人に扱われて、でもさっき私が連れ出しちゃって。戻りにくいでしょ。ね、駆け落ちしちゃおうよ。それで私と二人で、楽しく暮らそうよ。」
ホーリーは聖夜のどうとでも取れる文脈に隠された真の意図に気付いていない。この世という物質的な次元の中で一緒にふらふらと、旅をしつつ彷徨う事だと思っている。さらに、二人をいつの間にか取り囲む赤黒い焔のような水のような物体にも全く気付いていない。地面が、ゆっくりと、埋没していく。
「ホーリー、私貴方と離れたくない!」
少しずつ下がっていく目線を隠すように、聖夜はホーリーに抱きついた。抱きついたと言ってもお互いその感触は無い。聖夜はホーリーの体温を感じないし、ホーリーも生前の聖夜のような柔らかさを感じない。それだけでも、ホーリーと私は違う、もう違うと思った。ホーリーは、生きてるんだ。その事実が聖夜に躊躇と焦りを与えた。でも、一度開いた冥界の門はもう閉じられない。

ごめん

突如ホーリーは、腕に暖かくて力強い何かが絡みついて上に引っ張り上げられるように感じた。見上げた先には怒ったような表情の鈴音。見上げ…って、あれ?そしてホーリーは今や自分の頭上にある石畳の地面に気が付いた。すべてを悟った。ホーリーは必死になって鈴音の差し伸べられた腕を掴む。
ずるん。勢い余って鈴音に倒れこむような形になってしまった。急いで起き上がり、謝罪する。傍には…悔しそうに悲しそうに、そしてきっと、取り返しのつかない事をしでかしそうになった後悔の裏返しも含んで、うずくまるネグリジェの少女が居た。
「聖夜…ごめん…」
自分は全く悪くないのに、なぜか謝ってしまうホーリー。聖夜は、ダイヤモンドのような涙を頬に伝わらせながら叫んだ。
「…もういいわよっ!どうせあんたも、ちゃんと愛されてるんだ!私なんかいなくても平気なんだ!あんたなんか居なくたって、独りで逝くわよ!!」
再び赤黒い揺らめく物体が、今度は聖夜だけを取り囲む。しかしそれは、鈴音によって消されてしまった。座布団に落ちた煙草の火のように、靴の裏を使って綺麗に消していく。時折砂をかけて。一歩間違えば自分も巻き込まれるかもしれない冥界の門を目の前にして、鈴音は落ち着いたものだった。
さっきも思ったけれど、こんないとも簡単に門を消してしまえるなんて、この女何者…
「さて。」
砂で汚れた手をぱんぱんと払って、鈴音は聖夜とホーリーに向かってにっこり笑う。
「デートの仕上げ、するわよ。私と竜星も参加させて貰うけど、良いよね。」

「クリスマス、おめでとーっ!ついでに竜星16歳おめでとーっ。正確には明後日だけど。」
ぱちぱちぱち、と乾いた拍手が鈴音一人分だけ響き渡る。
ごうごうと燃える暖炉の火、オレンジ色のシャンデリア。成人男性ほどの背丈に切られて、モールや金属球で飾られもみの木に、イチゴの赤とクリームの白のコントラストが美しいショートケーキ。脂ギッシュにてかてか輝く飴いろのローストチキンにしゅわしゅわとめまぐるしく泡を立てるシャンメリー。マッチ売りの少女が走馬燈で見た家族のクリスマスはまさにこういうものだったろうと思われる光景が、聖夜を取り巻いていた。
「あれ?みんなも拍手。…もしかしてお二人とも、名前からして誕生日今日だったりする?」
「そうよ、クリスマスベビーだからってはしゃいであいつら、この名前を付けたの」
「ちっばれたか。」
「なーんだあ、春生まれは私だけか…まあいいや、皆まとめておめでとう!生れてくれてありがとう。」
鈴音は精神的虐待について書かれた小説にでも出てきそうなこっ恥ずかしい台詞を実に嫌みなく、さらりと口にした。それからケーキを切り分ける。竜星の分、ホーリーの分、聖夜の分、そして自分の分。直径21cmのケーキの四半分はかなりでかい。しかも聖夜は食べられない。鈴音の作る菓子が大好きなホーリーもこれには少しげんなりした。それでもクリームとスポンジを一緒にフォークで掬って口に含む。
「やっぱり旨い。」
「ありがと。」
「…まあ、悪かねえよ」
わざとなのか気の利いた褒め言葉を思いつかないのか、竜星もそれだけ言って残さず食べることで味についての感想を表現する。
「…なんか、家族みたい。」
ホーリーにケーキを譲りながら、聖夜は頬杖を突いて言う。
「こら聖夜ちゃん、食事中に頬杖は着かない。…て、なななんでそう思うのよ家族とかそんなんじゃないから」
「あは、照れてる。やっぱ家族っぽいよ竜星さんがお父さんで鈴音さんがお母さんでホーリーが子供みたい」
「な、な…」
聖夜は今夜一番、楽しそうに笑う。頭を抱えて俯いてしまう鈴音に、竜星も手酌しようとしたシャンメリーをどばっとテーブルクロスに零すことで動揺を表わす。ホーリーと聖夜はますます笑った。
「熱ーい、熱ーい」
「おうなんだ楽しそうな事やってるじゃねえの」
すっかり修復されたダイニングの窓をがらりと開けて、怪盗・右京と彼に仕える吸血鬼、呉葉が入ってきた。
「ちょっと近くまで寄りましたので…これ、さる旧魔法華族の屋敷から盗んできた『血のように赤いワイン、というか血』です。皆さんでどうぞ」
「あっ、右京さん…ケーキ、ホーリーまだそれ食べてないよね?大丈夫、あがって。呉葉ちゃんありがとう、でもホントに血だったら呉葉ちゃんが貰えばいいよ」
テキパキと取り仕切る鈴音に、知らんふりして小説なんて読みだした行儀の悪い竜星は、やっぱりお母さんとお父さんのようだ。聖夜は思った。それに、今現れたこの二人も含めて、この場に居る全員が何かしら絆のようなもので結ばれている、と聖夜は感じた。その絆の輪の中に、部外者であるはずの私を排除しないで、すんなり受け入れてしまうこの人たちの…特に鈴音さんの温かさは一体何なのだろう。なんで他人に、こんなに優しく出来るんだろう、家族にすら優しく出来ない人だって世の中には居るのに。
しかし、とても満たされた気分である今、それについて考えることは止すことにした。窓の外は少しずつ明るくなってきた。また、新しい朝が始まる。きっと昨日よりもっと素晴らしい一日だ。
聖夜は自分の半透明の身体が淡くなっていくのに気がついた。でも、もう抵抗しない。それでいい。もう怖い物は、ない…
聖夜の異変に気がついたホーリーは、聖夜を呼んで、ダイニングの外に連れ出した。
「あのさ…指輪、受け取ってくれよ。オレは付いてけないけど、代わりにさ、連れて行って。何時になるかわからないけどいつかは俺も行くと思うんだ、だから。」
ホーリーは雪の結晶の指輪を取り出し、聖夜の指に嵌める。ホーリー自身も驚いたのだが、指輪は聖夜をすり抜けて地に落ちること無く、きちんとその指を彩った。
「…苦労したんだよ、そいつ手に入れるのに。会えなかった一週間の間ずっと竜星にこき使われててさ。だからさ」
聖夜が何も言わないのを指輪の拒絶と取ったのか、ホーリーは畳みかけるようにぺらぺらと指輪を付けてほしい旨を伝える。聖夜の身体が眩しく発光する。光が漏れ出る個所から、聖夜の身体は溶けて行く。もうすでに半分消えてしまった、それでも美しい顔で聖夜はにっこり笑った。
「ありがとう。ホーリー、大事にするね。ホーリー、大好き。鈴音さんや竜星さんも良いけど、やっぱりホーリーが一番、大好き」
聖夜の身体はもう殆ど光となって溶けてしまった。しかし指輪を付けた薬指だけが、この世との、ホーリーとの別れを惜しむかのようにいつまでも残っている。
「ホーリーが来てくれて、私…」
聖夜は全て伝えることが出来なかった。そこまで言って、聖夜は消えた。
ホーリーはその場に座り込む。本来の飾らない、黒い小さな猫又の姿に戻っていた。
「…絶対だぞ」
ルビーのように赤い両目が滲んで、光の名残がすうっと床に零れて落ちた。

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Posted at 01:43 | マダム沌夕 | COM(0) | TB(0) |
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