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2009.02.17

長崎旅行行程比較

現在、我丞が考えているコースはこんな感じです。

1日目に静岡から長崎へ行って午後から観光。
2日目に五島へ行き、ビーチ、温泉、豪華な夕食を楽しむ。
3日目に五島から長崎、市街地観光、帰路につく。

これにもとづいて、2つの静岡-長崎移動パターンと料金を出しました。
出してみてちょっと俺びっくり。
指定席と2人1寝台にこだわらなければ、実はその2がお得。

きまま、お前のおかげで重大な事実が発覚したな。ありがとう。
ただし、これはあまりよろしくない気もするので、1人1寝台で安眠できるパターンを考えてあります。

その1。
【IACEトラベル1泊3日ツアー利用パターン】
(強行スケジュール)

静岡-中部国際空港ー長崎空港-長崎市街地
往路 Bフライト8:00-9:30
復路 Bフライト18:25-19:40

基本料金26,300円
※基本料金には1日目の宿泊費を含む
往復路追加代金6,000円
中部国際空港-静岡バス往復代金6,300円

長崎県営バス片道50分、800円×2  
五島行きフェリー片道3時間、往復代金4,704円(学割あり)
2日目カンパーナホテル宿泊費11,025円

合計金額=55,929円+X(タクシー代、前日後日の場所代)

ーーー値下げ要因ーーー
カンパーナホテル宿泊費(朝食、夕食をなくす)-約1,000円


※集合方法
a.4日にもい家にて、19時より集合、タクシーを使用し駅へ向かい午前3時発バスにて空港へ。
b.4日夜9時より呉服町マクドナルドにて夜明かし、午前3時発バスにて空港へ。
※解散方法
a、b共通.22:00中部国際空港発バスにて静岡へ。24:50静岡駅着。


その2。
【新幹線、在来線利用パターン】
(帰り時間は出してませんが、無茶な時間では無いことだけは確約します)
静岡駅ー名古屋駅-博多駅-長崎駅(市街地)
静岡駅発 8:12、名古屋駅着 9:10
名古屋発 9:15、博多駅着 12:45
博多駅発 13:00、長崎駅着 14:51

静岡-長崎の新幹線、往復電車代金(学割)36,640円
※全行程指定席(往復指定席代金 合計3520円)を含む
1日目宿泊費4,450円(1人1寝台。朝食なし)
五島行きフェリー片道3時間、往復代金4,704円(学割あり)
2日目カンパーナホテル宿泊費11,025円(夕食、朝食込み)

※集合方法
午前7:40静岡駅集合
※解散方法
午後9時前後に静岡駅にて解散

合計金額=56,819円

ーーー値下げ要因ーーー
新幹線、電車の指定席代金-2,814円
c.1日目ホテル宿泊費を削減=合計金額52,488円
(2名1台でベッド共有。2部屋借りで一人あたり3,033円)-1,517円
d.1日目ホテル宿泊費を削減合計金額=52,285円
ファミリールーム(一部屋17,000円で1人1寝台、一人あたり2,830円)-1,720円



我丞は
「その2(新幹線で往復)のd.(1日目ホテルはファミリールーム使用)指定席は賭ですが無し」がおすすめです。

どうでしょうか?
わかりにくいところあったら言ってね-。
質問とか疑問とか、補足とか宜しくお願いします。


---追記---2/17
五島宿泊料金について

「カンパーナホテルは高い。しかし温泉、食事、設備が豪華である」
費用削るとしたらここですねー。
というわけで、
★民宿やビジネスホテルなどで経費を抑えますか?
最大で4,000円近く安くなるのですが、旅行の楽しみって宿に泊まるってのもあるんではないかと思うのですよ。その辺も含め、みんなはどう思う?

修学旅行時に泊まったカンパーナホテルではない場合、ビジネスホテル1泊で5,000前後、食事付きホテルで8000円前後になる。
ただし温泉はないらしい。
(※ビジネスホテルは食事がつかないのが基本らしく、夕食朝食は買う事になる。
一応ほっかほっか亭の存在が確認されている)

その他の選択肢
■ビジネスホテルシャトーイン福江(2人一部屋)
http://www.gotokanko.jp/yado/yado/bs/shato-in.htm

■旅館中本荘(名物料理が出るらしい?)(3人一部屋)
http://www.gotokanko.jp/yado/yado/hoteru/nakamoto.htm

■福江バスターミナルホテル(ビジネスホテル)(2人一部屋)
http://dom.jtb.co.jp/yado/Shisetsu.aspx?st=8208005&sl=pl

時間ある人はこちらも見てね♪
http://www.gotokanko.jp/syukuhaku.htm


俺は温泉に入ってゆっくりしたいのでカンパーナがいいです・・・(我儘)
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Posted at 00:35 | がじょ一 | COM(0) | TB(0) |
2008.10.10

Drag Queen ―end and start―


――――――――――「シィセ」
起床の一瞬、夢の境に幻を見た。

「腹の傷はどうだい」
「最悪だ」
薄目を開ければ映る医者の隻眼に悪態を吐く。
ごうごうと煩い排気ダクトから漏れる街の騒音は、もはやシィセにとって何ももたらさない、ただの雑音だった。


『薬』がこんなに世界を変えていた、などと。
「思ってもみなかった」

寝たまま起き上がる気配のない患者を置き去りに、何の心配も無く医者は遠ざかっていった。
抗争に破れ、何もかもを失った身体から更に血を抜き、勝手に『薬』まで抜いておいて、知己の闇医者は何の頓着も無く大金を請求した。
茶シミのひどい小切手にサインをすれば、後は勝手にしなとばかりにベッドサイドを離れていく。
そのままほっといてくれ、そう思うと同時に、小さなパーツと一緒に包帯が飛んできた。自分で巻けということか、酷い精神科医め。「仮にも医者の端くれだろう」とは、前にもこの口が呟いたことらしい。覚えのある口上だ。
あの日の怪我から一週間を経てなお鈍痛の残る、重い頭の中で文句を言ってやる。糞藪医者。

「“新世界”ってやつだよ」
やけに捌けた口調で、医者は言葉を続けた。
新しいクスリをぶちこんだのかと、一瞬、輸血したばかりの血液をぶちまけたい気分になって、どうでもいいかと思い直している自分に気がつく。
複雑だった。それと同時に胸の中枢は空虚だった。
「新薬の実験台か私は」
気管支の辺りだろうか、何も無いところに淀んだ空気を吐き出すため、盛大なため息を零して身を起こす。改めて腹の傷を検分すると、まだ繋がっていない切り傷から薄黄色の滴が染み出して病人服を汚した。

かつてはこの腹の中に、いや、体中を『薬』が埋め尽くしていた。それが今は、別のものかもしれないとはいえ、全く意味を失って体の外。『薬』の一部はガラス瓶の中に閉じ込められてさえ居る。精神科医が『薬』抜きだと言って体中から漉し採ったそいつを、私は見たわけではなかったけれど、間違いなく、何もかもが自由になっていたのがいい証拠だ。
自由。そう。今までは自由ではなかった。
「違うよ“元・王様”。概念だよ概念」
馬ッ鹿じゃないの。そうカルテに向かって呟く声を背に思考を遮られ、淡々と包帯を巻く羽目になった。

プラスチック製の安い留め金を押さえに、白いガーゼ、白い包帯、白い晒しと順に巻きつけていく。手慣れた動きを見て「優雅ね」と言って笑ったのは誰であったか。

足をベッドサイドに降ろして掃除のなっていない床を踏みしめる。
久しぶりの感触に、ほぅと安堵の息が漏れた。ほぼ一日寝たきりの生活など、生まれて初めてだったんじゃないかと、振り返って眉をしかめる。出来れば、これが最初で最後になる事を祈る。

 一週間使われずにいた筋肉は衰え、一筆書きの絵をみるがごときゆるやかなカーブが脚線を作る。これが『薬』抜きの終わった後の身体か。あちこち触れるが、どこもかしこも自分のものでは無いような形になってしまったようだ。本来なら、人間の身体とはこういうものなのだろうが。
たぶんそれは見た目だけではないのだろう。内臓から筋肉からぐてぐてと弱りきって、酒場のハイ・ドランカーより酷いに決まってる。今まで絶えず使い酷使し続けてきた身体なのだから、数日のことで無に帰すものではないはずだ。が、今すぐに立って走れるまでの自信は無い。

おまけに、今までは『薬』で過労を無理矢理抹消していたこともある。
医者はカルテを無造作に投げ、この部屋に唯一の扉から出ていった。ベッドの足元に放られたそれには、退院許可を示す、適当なサインがしてあった。幾つもある偽名の一つじゃない事だけが気にかかっていたが、この位置からじゃあ光を反射して真っ白だ。

決して静かとはいえないざわつきが部屋の中に満ち、その中に一人取り残される。
それら全てが、「こっから出てけ」と声を放つ。
もとより長居するつもりもなかったが、これほど早く出て行く気もなかった。ため息を、一つ。
・・・・・仕方無い。発つか。
安物のスリッパに足を入れ、そのまま数秒の経過を待つ。
座ったままベッドの端に手をかけ、すぐにも立ち上がれる姿勢を作り、そして固まった。自分の周囲数メートルだけが静かな空間は、怪我をしたのとはまた別の、あの日に重なる。


固く閉じた目蓋の裏に、王として名乗りを挙げる為、初めて鉄骨塔の上に登った時に感じた足のすくみが蘇る。夜のことであったから、それほど鮮やかでもないネオンに照らされ薄暗い空間だった。距離を置いて取り巻くダクトの排気音が、よく似ている。

同じように無理矢理に巣から飛び立たされる雛鳥の気持ちで、けれど今は、あの時ほど冷えた眼をしてはいられなかった。灼熱の集団と精神を氷のまなざしで制する王はどこにもいなくなった。
居るのは、変化と不安についていけない病人が一人。
・・・・・・これで立てなかったら、どうするか。
あの薮医者は捻挫、骨折の可能性は無いと言っていたが、腹の傷をウォッカに酔わせて縫う奴だから何ともいえない。だいたい、闘争から敗走の間にどれほど殴られたか知れない。神経がごっそりやられていたところで、何ら不思議ではないし、

「おかしいのは私のほうか」
逡巡には長い、今までに無い戸惑いを小さく嗤う。
弱くなったものだ。たったの7日間で。
神経が半分ほど逝こうがナニしようが、薬の後遺症と思えば成ったところで半身麻痺ぐらいどうとでもなった。もう半分も同じようにして、あとは他人に任せて御陀仏すればいい。
だが、自分はそうはいかなかった。

神経が、あるいは脳の思考回路が薬で壊れでもしたのか、薬抜きの過程で今の心境に至ったのかは判らない。ただ、自分の世界は温度を幾分下げてしまった。このぼったくり病院に倒れこむ数日前の沸騰していた時間が、夢幻と化けてしまった。今はもう何をどうする気にもならない。
自嘲しようと堪えようと変わらない、精神的な変化に行き当たって途方に暮れる。
弱い心だ。
ぼろぼろだ。

だからこそ、『薬』が必要だった。
幻のあなたが支えてくれたから、私は、"最強"を演じられた。

「ほら」

瞬きの間に揺れた白い手に、声もなく顔を上げる。
ほんの一瞬だった。
朝になる度私を起こした白い手が、真昼の眩しさにちらつく。

「ほら、立ってよ」

まただ。
幸せそうな微笑すら見せて。

私の『薬』が立ち顕れる。
中毒性を帯びた肢体に、無菌室の香りを纏って。
残効が残っているんだ。
彼女を見ることは、もう、無くなるのだ。
それならば。
残すべき言葉があるだろう。

「さようなら」
まだ朽木の色で染みの滲む病人服を脱ぎ捨て、歩みだす。

「私は、貴女を置いていくよ」
一足ごとに総身が脂汗を吹いた。体中痛いどころの騒ぎじゃないが、宥めに宥めて爪先を上げる。
一歩、苦痛まみれに踏み出す。
これが、生きるということだ。

なんとかテーブルに辿り着き、黒い上下を身に纏った。
強化繊維が身体に纏わりつく感触に息を吐き、味わいながら腕を伸ばす。『薬』があった頃には、生活と名の付く行動すべては憂いものでしかなかった。
だがそれこそが非日常であったと、今、漸く気づく。

「ごめんな。でも、もう終わったんだ」
中途半端に断ち切られた後ろ髪が、うなじの辺りでもつれて不快感を増した。
王者としての格を表す長い髪は忽然と消えていた。
そのせいだろうか。身軽すぎて身体が浮いてしまいそうなかんじだ。


ベッドサイドというには不親切な棚に用意された、真新しい銃を手に取る。色は勿論、黒。
これが、私の武装。
『薬』などなくても、こいつが居れば強くなれる。
ようやく取り戻せた相棒。おかえり、と呟いて笑った。

「貴女にとって、私は幻だったんだ」
そしてそれは、
「お互い様、だったんだと思うよ」

何もかもが間違っていたんだ。
だから。


「さようなら」



Posted at 02:12 | がじょ一 | COM(1) | TB(0) |
2008.02.11

バレンタイン企画

迫る2月14日
やります、バレンタイン台詞で10のお題(女性編)。
女10人寄ればかしましいにも程があり、
十人十色の恋模様。
普段このページを見てくれるお嬢さんに、感謝の気持ちを
混入したSSをお届けしましょう。


Please read the bitter & sweet short stories!
Posted at 21:13 | がじょ一 | COM(0) | TB(0) |
2008.01.22

last drive -下-


電話が鳴る。


「はい、紅谷」
「あああ、なっちゃん着いたんだねっ、もう30回も電話してたのよ。それなのに、ほんと、もう」
えぐえぐびーびーと泣きじゃくる目覚まし電話の音声が、痛いぐらい矢継ぎ早に突き刺さってくる。寝起きに、コレは痛い。
おまけに空港の人混み、ひっきりなしのアナウンス、雑音、騒音、音、音、音。夢が呼び出してきた記憶の波もばらばらになる。
懐かしい夢。
あの男に会った、最後の記憶。もう少し思い出していたかったのに。
「何。どうしたの」
頭痛がするぐらい必死に考えていたのに、


「死んだの。高野君、死んじゃったの」


「いつ」
言葉にならない。
「一時間くらい、前」
声が張りつく。
「どこ」
自分じゃない。
「え?えと、市立病院、で」
何も伝わらない。
「そう。うん。」

「うん。って、なっちゃん?」

「お通夜、やるんでしょ?」

「そう、あの、えっと、」


「メールに送って。読んどくから」


通話を切るのは赤いボタン。電池が少ないからすぐに画面を閉じて。
そのまま。顔が、上がらなかった。動けなくなった。
一人で時間を失くした身体をよけて空港の音が続いていく。
「もう」
どこにも。



結局、通夜にも出棺にも火葬にも埋葬にも、間に合わなかった。
どうにかすれば行けたのだろうけど、帰巣本能で実家に帰ったあとの体に、動く気力なんて残ってなかった。おまけに、久しぶりの寒い田舎の外気温で、意志なんかなくしたぼろぼろの身体はあきれるぐらい簡単にインフルエンザにかかって、布団の中で動物園のライオンみたいに眠った。
夢は、一度も見なかった。




2両しかない田舎の電車が、老婆顔負けの未練たらしさでゆっくりと駅のホームに収容されていく。4人がけのボックス席を手荷物と一緒に占領した、たった一人の乗客の頬杖ががくっと外れた。終着駅だから、寝過ごしてもまったく問題ないのだけど、5日もぐでぐでと寝ていたせいでほとんど眠くなかった。

確かめにいくわけじゃない。
もういない人を、探しに行くほど、新聞記者は迷信深くない。ていうか、そんな馬鹿なことしたらあいつが笑うに決まってる。
それでも、行かなきゃならない。ニヤニヤして黙って、どこか違う世界から笑ってるあいつには、まだ会えない。
だから、もう一度あの場所に行く事にした。


「なーっちゃーん、こっちー。はよおいでー」
「ごめんね、ハルさん忙しいのに」
改札を出た左のカーブに白のビートルが一台エンジンをふかして待っているのをみて、高くないヒールを鳴らして駆け寄った。おみやげの紙袋を後ろに放り込んで助手席にまわると、白いセーターでもこもこに着膨れたハルさんが笑う。
「実家に帰るなり風邪ひいたんやて?外国のぬるかったるい温度に馴れとうからや」
地元のおばさんも顔負けの方言まじりの言葉でひとしきりからかった後、
「で、連れてってほしい場所ってどこ?」
「連れて行ってほしい、っていうか、車のハンドルごと替わってくれるとうれしいんだけど」
拝み倒す勢いで両手を打ち合わせても背もたれがすぐさま音を吸収、かけっぱなしのエンジンが二人分の体重を揺らす。姉御美人のハルさんが逡巡するとき、右手が口元に触れる癖がでる。
少しのあいだフロントガラスの向こうに流れた細い眼が、ふっと思い出したように和んだ。遠くに逃げて電話だけしていたあたしと違って、二十歳にして電信柱を登り、窓をこじ開けてでも会いに行っていたハルさんには、幾つもの思い出が残っているはず。少しどころでなく、うらやましい。
でも、そんなハルさんでさえ窓の中で掴みどころ無く笑う引き篭もりを下界へおろすことはできなかったのだという。その理由を、ハルさんは問いただしたことがあったんだろうか。
再びこっちに向いた悪戯っ気のある瞳は、あいつの真似をしたのか、どことなく食えないかんじに光る。
「その場所、夜行ったほうがええんやない?」



随分会ってなかったおかげで、話の種には困らない。仕事場でいやおうなく覚えさせられたくだらないジョークに噂話、ドライブインで話す程度の小ネタはハルさんの合いの手に乗せられて、噺家も夢じゃないと思えるほど沸きに沸いた。
それでも、小ぢんまりとした商店街を抜ける頃にはそれも尽きて、自然と話題は故人のことに移る。あたしが尋ね、ハルさんが答える事がほとんどだったけれど、だんだんと民家のなくなっていく国道沿いの車の中、飽きもせずに小さな会話を続けた。

相変わらずハルさんがハンドルも会話の主導権も握っている。
間遠になる信号機で車は一旦停止。くん、と反動に揺さぶられて視界が一瞬ガラス越しの星でいっぱいになる。

あの日には、まだ足りない。

「それでね、逝くなって声かけたら、にぃって笑ってさ、どこにも行かないよ、って。まるで喜劇の掛け合い」
病院担ぎ込まれてから言われましても、とハルさんが苦笑する。
「それ、最後に?」
「うん。笑って死んでった」
青信号に急発進して、ハルさんも笑った。



狸でも出てきそうな林道に差し掛かる少し手前で、ハンドルを替わってもらった。きつい傾斜は、あの時と変わりない。
しばらく道なりに走って、思い出すまま、誰も追いかけては来ない細い道の真ん中に停車してみる。
ロックに入れたブレーキの力で斜めに固定された座席に吸い寄せられて、低い車の天井を仰ぐ。黒い林に遮られて星は見えない。

「ここ?」
怪訝そうな声で中途半端な景色を見回す動作で、ハルさんがハッタリを仕掛けていたのだと知った。どうりで何度も別のルートを示してみたりするわけだ。それでも、ついさっきまで知らない道を堂々と走ってきた胆力と、あたしのちょっとした言葉から道を読み取ってしまう洞察力とに舌を巻く。
これから話す事も、もう知っているんだろうか。
「ねぇハルさん。引き篭り始めた時の事、覚えてる?」
「・・・・・・んー、ちょい待ち」
ジッポーの音と共に煙草の先に明かりを灯す。あたしにはよくわからない美味しさがあるという煙を、長く、吐き出す。
細く開けた窓の境目で、逃げ出す白煙と寒気がぶつかる。
「ありがと。もちろん、覚えとるよ」
大人なハルさんのさりげない承諾に感謝して再び口を開く。
「文化祭もすっぽかして、怒ったハルさんが2週目に窓から突撃」
くくく、と助手席で笑う人が続ける。
「3週目に会いに行ったあたしに堂々と引き篭もり宣言。あの時はびっくりしたなぁ。電信柱から落ちるか思うたわ」
次第に短くなる煙草の先を二人して見つめる。
「毎日電話攻勢しかけたんが効いて、相当ぐらついとったから直接会って落としたろ!って気合入れて行って・・・・・・そいで、アレやものなぁ」
ほとんど独り言に近い呟きが、ぽつりと浮いた。
空白だけ、詰めこんだような声だった。
ハルさんは病院にも行って、葬式も、お墓まで、本当に最後まで全部見て、看取った。それでもまだ、終わりを見つけられないでいる。唐突にいなくなった事にも、9年前の事にも。

理由があれば、結果は飲み込めるのだろうか。
きっと、そんなことは絶対にない。
何もなくなったところに後付けの理由だけ転がってこられても、どうしようもなさが募るだけで、それこそ、どうしていいかわからない。
ただ、今この空間をどこかへつなげるためには、この言葉しかないと思った。沢山の傷をつくってきた直感で、そう思った。
「あたしが、無理に外出なくていい、って。言ったの」
「ハルさんが説得してくれてるのは、よくわかってた。けど、封鎖してたドア開けてもらって、綺麗過ぎるぐらい片付けた部屋見て、全部変わらないはずなのに、笑い方だけ変になってくの見てたら」
助手席のハルさんは静かに座ったまま。
「他に、なにも言えなかった」


「・・・・・・そうだね」
深く座りなおすハルさんの指先で、橙にも見える赤の光点が揺れた。
「最後まで、どっこもいかんと、部屋の窓から見えない星ばっか見てた奴やったわ」
トントン、と二つ、煙草の灰を落とす音が響く。
「あたしはあたしで、ずーっと、どうにかなると思ってたのやけどね。無理やった」
銜え煙草の口元は、悔しそうに、それでも笑う形を止めたりしない。
「でもなぁ、奴がたまに窓開けてさ、叫ぶのよ」
「叫ぶ?」
「“いきたい”ってね」
生きたいのか、行きたいのか、それとも逝きたかったのか、あたし達にはわからない。

「・・・・・・こんなとこあったんねぇ」
地元民ハルさんの目が丸くなる程、文句無く満天の星空が広がる。
あっけにとられて危うく煙草の灰を落としそうになるのを灰皿に受けて、狭い車の運転席から一歩踏み出す。冬枯れた草がしおしおとたわんだ。

仕事中にしようものなら間違いなく大笑いされるだろう、踊るようなステップで山頂を歩いて進む。

車のドアを払う仕草で閉めてハルさんがついて来るのがわかった。ジッポーから火を出す涼やかな金属音がススキの原を抜ける。
「ここなら、あいつの弔いには丁度良いやね」
振り返れば火を着けた煙草の灯が指の先で背景と混じって、星空に赤い星を増やす。
気を遣ってあの機械だらけの部屋に持ち込まれる事のなかっただろう紫煙を、ハルさんはゆっくりと空に溶かす。風にあおられて盛大に焚かれるセブンスターは、線香に見立てたようにも、それ自体が手向けのようにも見えた。



「あたし、ここで会ったの。一度だけ」
くく、と、喉の奥で笑ったハルさんがダウンジャケットのポケットに冷たくなった手を突っ込む。
「そういう奴だよ」
一緒になって仰いだ空が綺麗なのはわかっていた。
「そういう奴だったんだよ」


「行こうか」
「ん、もうええの?」


夜の中に、はじめて涙が流れた。
「いいの。もう、いいんだ」







“俺は、ここから出なきゃいけない、そうなんだろ?”
“いいの。ここに居て、”


“あたしが一緒にいるから”

Posted at 13:05 | がじょ一 | COM(2) | TB(0) |
2008.01.16

last drive -上-




「あたしが、閉じ込めてたんだろうか」
ぽつんと零れた弱気が飛行機の中で水蒸気になった瞬間に、たぶん、彼は息を引き取った。
日本時間、午前5時3分前。



長年電話でやりとりしていたそいつの臨終に、ボストンで政治家のケツを追っかけまわすのが仕事のあたしが当然間に合うはずがなかった。普段はメールも不在着信も溜まる一方の携帯が妙に静まり返って、それで慌てて確かめでもしなかったらきっと、今も汚いメモ帳片手に新聞社の山積み資料の中で原稿を書いていたことだろう。

“八年越しの人、病にて危篤”タイトルだけに集約された文字がチラつく液晶に映った瞬間、日本で起こった些細な出来事を知らせた友達に感謝した。
着信は8時間前。まだ、だいじょうぶ。
ひとつ下の後輩に仕事道具ごと押し付けて、多額のチップで映画みたいなスピードを出すタクシーで飛行場に乗り付けた押しの強さがあれば、今日の会見のうち幾つかはマシな記事になったかもしれない。それでも、無茶苦茶な判断をして正解だったという自己満足が、鈍足に浮かび上がる飛行機の椅子に収まる駆け出し新聞記者をちょっとだけ安心させていた。


夜の海上フライトはヘッドフォンから出てくるBGMと雲の音だけが響いて、数時間前の沈黙携帯なみに人間の存在を主張してくれない。閉めた窓越しに伝わる夜気が熱っぽい額を冷やしていくのが心地よかった。断熱材も暖房も効かない冬の太平洋の空気にあてられて、思考まで落ち込み出す自分の中に、ようやく、不安と怯えが言葉の列をつくる。
前回メールしたのは何日前、いや、3週間は連絡が無かったような気がする。恋愛関係も友人関係でも無いと確認しあった気楽な関係だから“いつも”の基準なんてさっぱりわからない。電話だって最近はインターネットを使ってタダみたいな金額で話していたから、高い携帯の国際電話なんかの履歴が残っているはずがない。
いくら並べてやっても『ある』と言えない男女の仲なんて、電波さえ掴めない薄い機械と一緒に放り投げたくなる。
「『ある』のは、」
今あるとはっきり言えるのは、流れる履歴の中、必死になって残してある現実味の無いメールと、それと同じくらい現実味の無い記憶の痕跡。しかも、随分と前の。



「ちょっと、本当にこの道でいいのね?」
満天の星空、広がるススキ野、右前方に保護森林と若木と切り株、そしてあたしの目の前には
5メートルも無い農道と軽自動車。
ハンドルを握った手が滑るかと思うほど汗だくになる原因は助手席からナビする声しかない。そうでなきゃ、こんな辺鄙なところに突っ込んでくるものか。
「合ってる。君の目前に延びるその道こそが最短ルートだ」
ニヤニヤと笑っているのがにくったらしく目蓋に浮かぶ声は、泥濘を跳ね散らかして進む車を完璧に他人事だと思っている。
というか、携帯電話で指示だけ飛ばしている限り他人事でしかない。ゆったりとパソコンの前に座って、携帯に埋め込まれたGPSを見ている暇があるのなら、今すぐ迎えに来い引き篭もり人間ナビゲーター。
というセリフを六回ほど飲み込む羽目になった。
電話の向こうでハムスターの歯軋りみたいな小さな笑いが起こる。
「・・・・・・何よ」
「いやぁ?道が合ってるかどうかはしつこいぐらい尋ねるけど、罵ったり、疑ったりはしないんだね」
従順と言うかなんというか、と低く呟く声が耳朶に染みた。
いつになく真剣な声にほだされたわけじゃなく、純粋に自分の行動の馬鹿らしさが恥ずかしくなって顔が熱くなる。暗くてミラーが見えないのがいい気味。
「日本に戻ってきました。私が会いに行くからナビ宜しくって頼みました。うちに来る?と聞かれたので、それ以外の何があるの、と答えてしまいました」
引き篭もりに会いに繁華街の喫茶店に行くほど、あたしは馬鹿じゃない。厭味な女子学生だったあの頃を思い出して、一語一語をはっきりと発音する。
それにしても、私が原因でこうなっているのは重々承知しているつもりでも、嫌がらせかこれは、と思ってしまうくらいに過程が長い。
夕暮れが迫る森林に囲まれたアスファルトの上、気づいたら全く人のいない廃村を走っていた時には驚くどころじゃ済まなくなってた。それでも気紛れなナビゲーターはこれが正しいと言う。

「はい、正解。俺がパソ出来る人でヨカッタネ。ついでに君がGPS携帯持ってたのも幸運だったよ。あ、そこ、道なりに登って」
ぱっと見て、あごが外れる気配がした。ものすごい傾斜。
「山登りでもさせる気!?ねぇ、ほんとは会うの避けてるんじゃないの?」
仕事の癖で、つい、一人しか居ない車内で矢継ぎ早に絶叫する。一瞬響く。咄嗟に口元を押さえ、抑制の抜けたハンドルに焦る、慌てて両手をかける。
ギリギリの道を、車一台がのろのろと進む。
「・・・・・・ごめん」
もう、何を謝っているのかよくわからない。排気音と振動だけが伝わる運転席で、坂道をにらみつけた。

なんでこう、壊れやすい空気しか作れないんだろ。
痛いほどぎゅっと握ったハンドルも、眉間の険しさも、あたしが本当に伝えたいことからかけ離れてるのに、
口を開けば確実にこいつを傷つける。
無理に殻から引きずり出された雛が傷つくのと同じ確率。
苦し紛れのため息なんて受話器にすら届かないって、頭では理解していても、どうしたらいいのか咄嗟に思いつけない口先が、ひどくもどかしい。
キツネでも熊でもエンストでもいい、気まずい無言を破るものがほしい。
だけど、

「ごめん。やっぱり、不安だよな」
いきなりの独白に、黙る以外の選択肢がない。
「会うの7年ぶりなのに、迎えにも出られないし、GPSで勝手に場所突き止めて」
途切れがちに響く戸惑った声がする。
いつもなんてない“いつも”の嘘くさい声じゃなくて。
「しかも、案内するとか言っといて農道だの林道だの」
そっと車を止めて、助手席に転がって喋る携帯電話を耳にあてた。
虫の音も無い車内で耳元にじかに言われているような錯覚を覚える。
「信用出来なくて、当たり前だよ」
吐息にしては長いこのかんじは、ため息でもついた?
「いつも、メールの文字でしか遣り取りしないから、現実に居るかどうかも怪しいと思ってたかもしれない。そんな奴にほいほい従ったりしない君が正しい、っていうか、聞いてる?」
聞いてる、と答える代わりに、画面の裏をコツコツとつつく。
なぜか、言葉以外の形で伝えたくなった。
「いつも画面のこっちに隠れて、臆病で、卑怯だと思うけど、」
一呼吸の間があって、おそらく、祈りの姿勢で紡がれた小さな声が聞こえる。
「他に、やりようもなくて」


こいつは、ばかだ。
本気でキレたとでも、思ったんだ。
電話越しでわからないことばっかり増やして。
そして、
臆病だから言葉にできないあたしは、エンジンをかけ直す。
安堵にも似た、いつもの呼吸が再開する。
そう、いつもの、見えない電話線の間にある呼吸。
何も言うことなんて無い。
言わなくていい。
伝わることなんかない。
同じ時間だけが流れる。
それでいい、たぶん。
「それじゃ、また、後で」


再び走り出した車の運転席であたしは、これ以上何が起きても絶叫しない覚悟をした。きっとまた何か、心臓に悪いことを仕掛けてくるに違いない。
それも、悪くない。
黒い林に遮られた視界が晴れるところで何か待ってる、きらきらした、横断歩道の白と黒に不思議を期待する幼稚園児に戻った心地がする。


そして、影が途切れる場所。
ひらりと片手を上げる、車の上に載った影。
「よっ」
星の中でこっちも見ずに笑うそいつに会った。


「外、出るんだね」
「俺のことはどうでもいい。問題はそっち」
「あたし?」
うむ。と、神妙な顔して頷く横顔が、視界の端、生温い夜気の中で震えるのが見えた。下にさげた目線は相変わらず合う気配も無い。まずアイコンタクトありきの外国じゃ通用しない、仕事場と違う習慣に戸惑う。違う、それだけじゃない。

「まだ、家に帰ってないんだろ」
ほらきた。
「わかってたよ、電話してきた時から」
ゆるかったるい呼吸と一緒に言われてしまった。
なんでこいつは、普段どこにも行かないくせに何でもかんでもお見通しなんだろう。経験値をどこで貯めてくるのか。ほんと、癪に障る。
たった二言で、肺の中に溜まってた空気と一緒に、苛立ちにかたまった肩の力が静かに抜けていく。ガラスのような呼吸が口から出て水蒸気と混じる。
他の誰にも出来ない暗号解読の一瞬。
数字にも文字にも表せないコードがばらばらと崩れていった。
謎の経験値で生きてる引き篭もりに、あたしは自分を全文読解されてしまいたいんだろうか。
外国にいる同僚たちにも、毎日連絡する学友にも気づかれないで辺鄙な山の頂上まで連れてきてしまった、息することに疲れた自分。スランプどころじゃなかった。

「それで逃走路を探してた」

ちっぽけな見栄っ張りが親と友達を、よくここまで騙してこれたものだと自分をほめてあげたいぐらい。それぐらい何度も家族と国際電話のやりとりをして、全然気づかれなかった。
こいつもたくさん騙して、片っ端から隠して、逆にこっちが頼られてるように見せかけてメールした。



ばれるなら一も十も同じだ。ベテラン記者の横文字が浮かぶ。
そう、経験も武器もない臆病者に必要なのは腹をくくること。仕事場と同じようにかみしめた唇と眉間の皺で、あふれるものを堪えて顔をあげる。視線が最短距離になる数センチ手前で、弱い自分を露呈する覚悟は出来た。まったく、今日何回覚悟させられることやら。
思う以上に遠い星座が背景になる山奥で、
「そうよ、逃げて来てなにが、」


「“そこにいて良いんだ”」


初めてまっすぐに瞳がぶつかる。


「・・・・・・・・・まさか忘れたとは言われたくないんだが、もしや」
「覚えてるわよ、それぐらい」
自分の言葉を返されるなんて。


“俺は、ここから出なきゃいけない、そうなんだろ?”
“いいの。ここに居て”





Posted at 23:35 | がじょ一 | COM(0) | TB(0) |
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